築地市場(東京都中央区)の移転先となる豊洲市場(江東区)の地下水モニタリング調査の最終結果で、有害物質のベンゼンが最大で環境基準の79倍検出されたことが14日、分かった。都が同日午後に開いた豊洲の土壌汚染対策を検討する「専門家会議」に暫定値として報告した。最短で今年末から18年春になるとしている移転時期に、影響が出る可能性もある。

 専門家会議の開始から約20分後。地下水モニタリングの結果に議題が移ってから、詳細な資料が会場に配られた。表紙には「第8回(前回)までのデータと比べ、急激に変動している箇所が多々あり~」との注意書き。青果棟などの5街区の1カ所で、1リットル当たりのベンゼンが0・79ミリグラム検出されていた。環境基準の0・01ミリグラムの79倍。その他の地点でも、基準超えの数字が連発した。

 5~7街区の調査地点201カ所のうち、計72カ所でベンゼンや、最大で環境基準の3・8倍のヒ素、検出されないことが環境基準のシアンが出た。猛毒の気体として知られるシアンは、初検出。昨年9月公表の8回目の調査では、5街区の3カ所で基準をわずかに上回るベンゼンとヒ素が検出されたが、今回は濃度も地点も急激に増えた。

 専門家会議の委員からは「なかなか見られない現象」「初めての経験」「あまりにもショッキング」と驚きの声が続いた。平田健正座長(放送大学和歌山学習センター所長)は「原因が分からない。このままでは評価できない。戸惑っている」と話した。同会議としても、都とは別の調査機関に依頼し、データの精度を高める意向。次回の専門家会議を開く3月までに、数字が大きく変動した原因を追究するという。

 モニタリング調査は、土壌汚染対策工事後の14年11月から約2年間、計9回行われた。7回目までは、1度も環境基準超えはなかった。専門家会議は、昨年10月から本格稼働した地下水管理システムや、地下水の採取法に原因があった可能性を指摘。都の改ざんを疑う声もあった。調査は民間4社が担当。最後の9回目は、都が初めて依頼した会社だったという。

 会議を傍聴した仲卸業者の1人は「このデータが移転後に出なくて良かった。これでは小池都知事は安全宣言を出せない。都民は納得しない」と強調した。【柴田寛人】

 ◆ベンゼン(benzene) 無色で引火性の高い化学物質。プラスチックや合成繊維などの原料として広く使われる。たばこの煙のほか、ガソリンにも含まれ、多くの発生源は排ガス。発がん性があり、皮膚の炎症などを引き起こす。専門家によると、地下水の環境基準で79倍の濃度では、毎日飲み続けない限り、健康被害はない。地下水に含まれても、地上の市場関係者や生鮮食料品に影響を与えることはない。