将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)がデビュー19連勝を飾った。25日、東京・千駄ケ谷の東京将棋会館で指された竜王戦6組決勝で、102手で先手の近藤誠也五段(20)を下した。同組優勝を果たし、史上最年少で本戦トーナメント進出を決めるとともに、プロとして初めての賞金90万円を獲得した。「19連勝」は将棋界全体の記録としても単独7位。天才中学生の進撃が止まらない。

 藤井四段が一気に仕掛けた。午後6時から40分間の夕食休憩ではチャーシューメンを食べてパワーアップ。対局再開後、盤の前で前傾姿勢で勝利への道筋を読み、猛攻を始めた。

 昼食休憩では五目焼きそばで空腹を満たした。みそ煮込みうどんが有名な愛知県出身だけに、麺ものが大好物の14歳。午後からはその麺のように、細かい攻略手段を重ねて優位を築いた。「終始攻め続けたのがよかった」。本戦トーナメント進出を決める大きな勝利を振り返った。

 この日は、デビュー戦以来となる特別対局室での一戦。前回は名人経験者の加藤一二三・九段が相手だったため、割り振られた。だが今回は「竜王戦各組決勝は特別室」との申し合わせにより、自分の実力でつかんだ。歴代のトップ棋士が数々の名勝負を繰り広げた部屋で、棋士生活初の賞金90万円も手にした。「(賞金の)使い道は特にない。獲得できたのはうれしいです」と照れくさそうに話した。

 渡辺明竜王(33)への挑戦権をかけ11人で争われる本戦トーナメント入りを果たしたことで、最年少&デビュー後最速タイトルへの道もグッと開けた。過去、竜王戦でルーキーが挑戦者になった例はない。「タイトル挑戦は大きな目標ですが、実力的にはまだ及ばない。(本戦では)強い先生と当たるので、全力でぶつかりたい。1局1局頑張って強くなりたい」。歴代単独7位となる19連勝を果たした14歳は、まだまだ成長し続ける。【赤塚辰浩】

 ◆新人の竜王戦6組V 第1期(88年度)の先崎学九段(段位は現在、以下同)から第20期の戸辺誠七段まで過去7人いる。うち挑戦者決定3番勝負まで進んだのは、第7期の行方(なめかた)尚史八段のみ。11人が争う本戦トーナメントはランキング上位の1組から順に優遇されるのが通例で、16年度は6組優勝者は3番勝負進出まで5人を勝ち抜かなければならなかった。組み合わせは今後発表される。