史上最年少プロ棋士、藤井聡太六段(15)が14日、神戸市内で行われた将棋の歴代竜王の講座「竜王アカデミー」にゲストとして参加した。

 メイン講師として地元・神戸市出身で竜王のタイトルを通算4期獲得している谷川浩司九段(56)、初代竜王の島朗九段(55)、藤井の師匠杉本昌隆七段(49)も参加した。約120人の親子が参加したイベントでは非公式ながら藤井と谷川との早指し戦が行われた。

 藤井のあこがれの人と「初対局」が実現した。同じ14歳でのデビュー、同じ関西所属、同じように最速の詰みを目指すスタイルなど共通項の多い藤井と谷川。イベント会場に設営された盤を挟み、2人が深々と頭を下げた。

 先手の谷川の表情は真剣だ。藤井にも笑顔はない。対局が進むと、子どもたちがプロの「次の一手」を読む。見事に当てた子どもたちが舞台に上がり、2人の戦いを間近で見ることができる特典付き。さらに子どもたちは「次の一手」を当てていく。身を乗り出して表情をのぞき込む子どもに藤井は思わず苦笑い。

 近い将来、公式戦でも必ず実現するだろうドリームマッチ。今回はイベントのため対局は引き分けとなったが、谷川は「相当苦戦した。本当はこちらが先手なので、先にこちらが攻めなければいけない。先に攻められた」。子どもたちの「先生」として対局中に自らの「次の一手」の問題を紙に記入するため、集中力は途切れる。それでも歴戦の勝負師は相手にペースを握られたことを悔しそうに振り返った。

 「次の一手」を紙に書くことが初体験だった藤井は「7三金か6三金というところで、すみません。私の気分で、7三金を選びました。外してしまった方、申し訳ないです」と、出題者として反省した。

 藤井は10日に東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第31期竜王戦ランキング戦5組予選準々決勝で、阿部光瑠(こうる)六段(23)を下し、同組ベスト4に進出した。次の準決勝に勝てば、「六段昇段後、竜王戦ランキング戦で2期連続昇級」という、昇段規定を満たすため、史上最年少での七段昇段が決まる。