青々とした芝生と黒土のコントラストがまぶしい。阪神がキャンプを行う宜野座野球場の光景だ。今年で15年目に入るが、かつては違った。外野の芝生は茶色っぽくて、水はけも悪い。雨が降れば打球はまったくはずまなかった。丹精込めた整備のたまものだろう。

 グラウンド管理に情熱を燃やす「土守」がいる。宜野座村社会教育課の宜野座恵造さん(40)だ。「キャンプなので、少しでも甲子園に近づけたいんです。愛着があるんですよね」と笑顔で言う。かつてはプロを目指した野球選手だった。宜野座高から専門学校をへて、社会人・川崎製鉄水島でプレー。3年前から野球場の管理に携わっている。

 グラウンドキーパーのノウハウを学ぶために阪神園芸に教えを請うた。14年頃には、甲子園を訪れ、フィールドに入った。「実際に踏んで、この芝生、メッチャいいな、そこに近づけたいなと」。かつては外野手だった。宜野座野球場でもプレーした。「昔、外野に飛べば、イレギュラーしていましたから」。聖地に心揺さぶられたのが、いまも原動力になっている。

 甲子園の芝生を再現するのが夢だ。当初は、あの濃緑に近づけるべく、色を塗ったこともある。いまは一年中、芝生の更新作業を行う。吸水性を保つために欠かせないという。11月に冬芝の種をまき、キャンプインに備える。昨年、名手の大和がこう言っていたという。「水はけ、良くなってきましたね」。最大の褒め言葉だった。【阪神担当=酒井俊作】