DeNA井納翔一投手(30)が“命をかけた戦い”を制した。1回の登板前。プレート後方にしゃがみ込み「決闘」の2文字をマウンドに記した。「シーズンとは違う。負けると巨人が圧倒的に有利になる。やるか、やられるかの意味を文字に込めた」。序盤は力みで制球が荒れたが、気迫は十二分だった。最後まで球威を保ち、7回7安打2失点でCS初勝利を挙げた。

 やれる準備は全部やった。前日7日の夕食は開幕投手で勝利したときと同じように、行きつけの川崎市中原区内の焼き鳥店に向かった。焼き鳥5本、クリームコロッケは鉄板のオーダー。夫人の好物、レバー炒めにもはしをのばし、最後はオムライスまで締めて大一番に備えた。さらに、試合当日の朝食は「粘りが出るように」と牛丼チェーン店の松屋に寄って納豆がついた朝定食にまで験を担いだ。「僕は粘れるかどうかが大事。すごい投手ではないので、それが生命線になる」。納豆はしっかりとまぜて粘りを出してから一気にかき込んだ。

 苦手としていた坂本に対しても逃げずに立ち向かった。登板最終イニングとなった7回の第4打席。前の3打席は2安打1四球だったが、フルカウントからの真ん中高めに146キロ直球を投げ込み見逃し三振。こん身のガッツポーズをつくってほえた。大役を全うした右腕は、試合後、緊張はしたのか? の問いに「僕は宇宙人なので緊張はしません」とピシャリ。開幕戦に続き、井納が大きな仕事をやってのけた。【為田聡史】