女優の輝きが増している。内山理名(21)。日曜日の夜、NHK大河「武蔵 MUSASHI」TBS「GOOD LUCK!!」と注目のドラマに連続出演中だ。15日公開の「卒業」では、映画初主演している。「撮影現場に入るとすぐにスイッチオンできる」という自信で、さまざまな役を同時並行して演じる。デビュー6年目、飛躍への絶好のチャンスを今、つかもうとしている。
写真=いまドラマや映画で大活躍の彼女。女優として喜怒哀楽の表情は豊富に作りますが、素の姿しか映し出さない鏡の前では飾ることのない笑みを振りまいてくれました=撮影・松本俊
現代劇と時代劇
日曜日の夜の女である。午後8時からはNHK大河「武蔵」に出演。同9時からはTBS「GOOD LUCK!!」と、2つの話題のドラマに連続して登場している。
「GOOD−」では、主演で副操縦士役の木村拓哉(30)に結婚を迫る積極的で、ちょっぴり軽いキャビンアテンダント(CA)うらら役を好演。制服姿も板についている。
内山 確かにスケジュールはきついけど、楽しくやらせてもらっています。本物の飛行機の中で撮影をするし、CAの訓練所も行った。飛行機が緊急着陸した際の避難用の滑り台から滑ったのはすごーく怖かった。共演の方はすごい人ばかり。先輩CA役の黒木瞳さんは、台本を読んだ以上のことを表現なさるんです。とても勉強になります。
「武蔵」では、主演の市川新之助(25)が演じる武蔵に強い恋心を抱く朱実役で出演。時代劇は初挑戦で、所作や着物での演技など初めてのことばかりだ。
内山 大河に、いつかは出演できればと思っていたけど、こんなに早く出演できるなんて、うれしい半面、不安でした。物語が生きるか死ぬかの戦の時代だから、声の張り方も違うし動きも違う。でも大河に入る前にNHKのレッスンを受けた時、先生が「どうせやるなら楽しくやろうよ」と言ってくれた。レッスンのたびに言ってくれて、次第に楽になれました。
2つのドラマには共通点があるという。それが女優内山の演技力、直感に磨きをかけている。
内山 2作品とも掛け合いが多くて、次に相手からどんな言葉が出てくるか分からない。要はアドブリが多いんですよ。「グッドラック」でいえば、木村さんや竹中直人さん、段田安則さん。現場で勝負という感じで、瞬間的に体で感じなければいけないということを学びました。
現代劇と時代劇の収録が同時進行するが、常に頭の中は整理されている。
内山 収録の前に台本をよく読んで、自分が演じる役の好きなところを個条書きにしてノートに書くんです。ここまで書き出したら、自分自身のこと以上に分かるというぐらいまで。演じる役が何を伝えたいか、何をやりたいのか。楽になれるんです。
「GOOD−」「武蔵」で共演している堤真一(38)とは、公開したばかりの初主演映画「卒業」(長沢雅彦監督)でも共演している。同時期の3作品共演は珍しい。
内山 堤さんは「卒業」でも「グッドラック」でも大河でもセリフの雰囲気が全然違うんです。それに、1シーンごとに、いろいろなアイディアや意見を監督やプロデューサーに提案するんです。常に面白いことをやりたいと考えている。自分も負けないで、いろんなことを考えるようになりました。関西(兵庫出身)の人だから収録の合間には冗談なんか言ってくれて、リラックスもさせていただいています(笑い)。
堤真一と3作品
「卒業」では、1度も会ったことのない父親(堤真一)に淡い恋心を抱く卒業間近の短大生を演じた。撮影は「武蔵」「GOOD−」の収録に入る前に、丸1カ月使って行われた。そこでの経験が、日曜の夜の2作品に臨む姿勢や演技に、大きな影響を与えた。
内山 映画の主演が決まった時は「うわー決まったんだ!」って感じでしたが、撮影に入ってすぐにプレッシャーを感じた。しかもスタッフの方が怖かったですよ。「そこどいて!」なんて…。でも、みんなの一生懸命さが伝わってきて、私とスタッフの方々は、何かが違うって思ったんです。
これまで出演したドラマは20本以上。ほとんど切れ目なくドラマに出演したきたが、「卒業」は初めてじっくり撮影現場にいる作品だった。長期間、撮影現場にいたことでスタッフとの意識の違いを実感した。「良い作品を作りたい」という、映画独特の職人かたぎの情熱を肌で感じ「スタッフに恥ずかしい演技は見せられない」と強く思うようになった。もちろんドラマもそう思って臨んできていたが、どこかに「撮られている」という意識があった。初主演という立場の今回の映画でスタッフと「一緒に撮っている」という気持ちが芽生えた。
内山 スタッフの動きを五感で感じて、本当に素晴らしいと思った。徐々にスタッフの皆さんと話すようになった。照明さんだったら、どうすればきれいに明るく光を当てることができるのか。カメラマンさんだったら、どのアングルだったらきれいに撮れるのか。いろいろ話を聞きいていたら、私の演技をものすごくよく見ていてくれる、そう感じたんです。
「卒業」は、これまで以上に思い入れのある作品に仕上がった。自分の演じる役の好きな点をノートに書くようになったのも、この撮影がきっかけだった。数々の”引き出し”を持ち、積極的に発案する俳優堤真一と出会えたことも、大きな収穫だった。
内山 スタッフ、共演者、自分でこの映画を作り上げたという達成感と自負があります。本当に多くのことを学ぶことができた。「卒業」は終わり、サヨナラのイメージがありますが、私にとっては、新たなスタートになりました。自分が、これから成長し、進んでいくために「卒業」があるんだと。
即スイッチオン
デビュー6年目を迎えた。当初のアイドル的イメージが抜け、着実に本格女優として成長している。
内山 子供のころ数学と体育は得意だったんですが、暗記ものはちょっと…。「東京ラブストーリー」や「ロンバケ(ロングバケーション)」とか、テレビドラマはほとんど見ていましたが、俳優さんはセリフを覚えるのが大変だなって思ってました。芸能界に入る前は、うーん、大きな目標はなかったかな。仕事は、洋服が好きだったからデザイナーや洋服屋さんの店員をやって、25歳前後で結婚してなんて…。
内山が所属する事務所では、都道府県で、順次1年間かけて地元の中高校に評判の女の子を聞き回るスカウト作戦を展開している。神奈川県で名前が挙がったのが内山だった。高校1年の夏休み最後の日、スカウトが自宅を訪ねてきた。
内山 写真を撮らせて欲しいと。Tシャツに短パン姿の、家にいたまんまという感じだったんですけど。
2カ月後には所属事務所の社長に説得され、芸能界入りを決意した。高校2年生の98年4月、求人情報誌「フロムA」のCMでデビューした。その後は、トントン拍子だった。最近は、女優の仕事が肌に合うと感じている。
内山 私って撮影現場に入ると、すぐにスイッチオンできるんです。子供の時から、あとに引きずるタイプじゃなかったし。休日は買い物をしたり、ハウスミュージックを聴いたり、掃除をしたり、遊園地に行ったり、映画を見たりと、すべてが演技につながる。今は何か新しいことを発見するのが大好き。(今後の目標は)今すぐとは言いませんが、SFとかファンタジー映画に出たい。なにか言葉にできない世界観が好きなんです。
以前は、問われると、目標とする女優さんの名前を挙げていたが、今は絞り込むことをしない。
内山 引き出しの多い女優になりたい。この人みたいになりたいと、1人を上げることはできない。なにごとにも体当たり、力が尽きるまでです。
蕾から花 無色無臭、でも存在感がある
映画「卒業」の長沢雅彦監督 彼女は本当に手が掛からない女優です。あいまいな描写を要求しても、その通りやってくれる。例えば、シチュエーションの違いを敏感にかぎ分けて、声の出し方を使い分ける。撮影では雨のシーンが多く、ずぶ濡れになることも多かったのに、ずっと体調をキープしてくれた。そういう点でも一人前の女優です。脚本が出来上がってきた時から、彼女を起用しようと決めてました。その時はまだつぼみだったけど、良い花を咲かせそうな雰囲気を持っていた。長所は「無色無臭、それでいて存在感がある」ところで、男女問わず好感を持たれる。そういった面では山口智子によく似ている。また一緒に仕事がしたいです。
◆「卒業」 卒業を2カ月後に控えた短大生の麻美(内山)が、幼いころに別れた実父で心理学講師の真山(堤)と運命的に再会する。父が真山であることを知る麻美、麻美のことを娘と知らない真山。淡い恋模様を通じて、麻美が成長していく姿を描く
◆内山理名(うちやま・りな) 1981年(昭和56年)11月7日、神奈川県生まれ。98年のCM出演を機に、同年のフジテレビ系ドラマ「美少女H」で女優デビュー。98年10月のTBS系「なにさまっ!」で連続ドラマに初出演。その後、NHK朝の連続テレビ小説「すずらん」(99年)フジ系「バス・ストップ」(00年7月)TBS系「ストロベリー・オンザ・ショートケーキ」(01年1月)フジ系「ルーキー!」(同4月)TBS系「ハンドク!」(同10月)など数々のドラマにヒロイン役などで出演。映画は00年「GO−CON!」、01年「サトラレ」に出演。趣味は写真撮影やガーデニングなど。特技は料理と書道。身長157センチ、B79−W56−H79センチ。血液型O。
(取材・大越慈、八百板正人)