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第436回    秋吉久美子  
2004.10.24付紙面より

秋吉久美子
写真=顔も声もしぐさも色っぽい久美子お姉さん。「てめぇーうっせぇーんだよ」などと常々口にする女性カメラマンの私は、反省、反省また反省。見習わせていただきます
(撮影・たえ見朱実)

「50歳」から解放された永遠の少女

 年齢という束縛から自由でいられる、希有(けう)な人だ。女優秋吉久美子。この夏50歳を迎えたが、長男(26)より2歳下の男性と交際し、最新作「透光の樹(とうこうのき)」でも濃密なラブシーンを、裸体を存分に披露している。デビューから三十数年。恋に仕事に、決してみずみずしさを失わない生き方のコツを聞いてみた。


不倫は嫌い

 恋多き女性である。35歳で離婚後、5歳下の空間プロデューサーと交際。44歳で住民票を沖縄に移し、17歳下の英国人英語教師と同居生活を送った。そして今年。26歳下のハワイ生まれの日系2世の男性との交際が発覚した。

 −−交際は順調

 「ケンカするときもありますが、それが理解の糸口だったりすることもある。成長し合える関係でいたいな、と思っています」。

 −−年齢差は気にならない

 「やけに元気だな、とは思います。でも(年齢差は)素晴らしいことだな、と思った。1人の男としてみると、人間って、あの年でもいろいろなこと考えてるんだな、と。こんなに揺れ動いたり、不安だったり、知識があったり…。理解できていいことだな、と思いました。それに息子もそれぐらい考えてるんだなって、いろいろと人生悩んでいるんだなって、しみじみと理解してあげられるから、とっても良かったなと思っています」。

 −−相手の年齢差が広がっている。年下が好きか

 「違うの。私は上も下もどうでもいい。年齢とかどうでもいいという人と、たまたまぶつかるんじゃないですか。基本的に不倫が嫌いなんですよ。奥さんや子供がいらっしゃる方と恋愛する場合、ここから先は駄目よって部分があるじゃないですか。そうすると、全身全霊を込めて付き合っている関係じゃない。そこからはバランスしか学べないと思うんですよ。家族を捨てるような人を好きになりたくはない。成立しないな、という悩みからは学びたくないんです。全身全霊を込めた愛からしか学びたくないの。わがままかな」。


感動と検証

 −−なぜそんなに恋愛できる

 「感動とそれをまじめに検証する気持ちがあると恋ができる。本を読んだり、映画見たりしてすごいと思う気持ちの延長に、恋があると思う。いつも感動する気持ちがある中で(対象が)人間だったらたまたま恋だったりするわけで。もうちょっと深めようと検証すると、恋が続いていく。恋する女とか言われるけど、恋を目指しているわけじゃないですよ」。

 −−つまり恋愛から何かを学んでいると

 「学びたい人なんだと思う。すごく。たぶん足りていない人なんじゃないかな。人生これでいい、と100%思える気持ちになるためにね。恋イコール充実とも思わない。恋がない時は物事が前に進みますし、恋がある時は引っかかっています。恋に全力投球は難しい。ただ仕事からも恋からも人生からも学べますから。行き着く先を見たいと思って生きています」。

 −−100%とは

 「今は独りよがりにならないよう、客観性と主観性を混ぜて自分を計ってますけど、そんな考え方がなくても自信が持てる、生きていけるんじゃないかなあ。そこに近づいていると思う。1歩、1歩」。


裸以上の裸

 「赤ちゃんを卵で産みたい」…。数々のぶっ飛び発言で世間を驚かせてきた。どちらかといえば“アウトロー的”イメージが強かった。しかし、今ではやっと時代が追い付いてきた感すらある。仕事ぶりは全く色あせず、第一線をキープし続けている。

 −−「透光の樹」で脱ぐことに抵抗はあったか

 「抵抗があるとかないとかというよりも、私の年で、最後にバッと脱ぐのではなく、ラブシーンそのものが意味を伝えるような、濃密なラブシーンが多い映画に出るのは、人類映画史上、世界映画史上あまりないんじゃないですか。ただ裸だけ引っかかって、その意味まで考えられないのは問題。その部分をクリアして、裸以上の意味を伝えられる裸じゃないといけない。それが一番大変だった」。

 −−見る人は年齢を感じない

 「驚きをもって見られないことが、素晴らしいことですよね。私自身が生意気といわれてきてるでしょう。生意気さを保ってきたからこそ起きた事件かな。今年4月の初舞台(『卒業』のミセス・ロビンソン役)では、ブラジャーやパンツがスリップにスケスケの状態で一場面出ずっぱりだったりとか。みなさん普通に見てるんですよ。多分『これだけ言いたいことを言ってるんだから、まぁやるだろう』と思われるからじゃない?」。


本質気付け

 −−ラブシーンに抵抗は

 「相手役の郷(永島敏行)が『今まで好き勝手やってきた罪の報いだ』と言うセリフがあるんですけど、世界的にみても50になる女優があれだけのラブシーンを、体をねじって隠すような表現方法ではなく、守るもののない表現方法をするまで追い詰められてしまうのは、今まで好き勝手言ってやってきた罪の報いだなって。でもそれに立ち向かえるし、立ち向かうことに興味深い自分がいる。自分はどこまでか、見定めたいのもありますしね」。

 −−好き勝手言ってやってきたと思っているのか

 「言いたいことを言ってるのは、本当は照れなんだけどね。『愛してる』という言葉も照れなの。本当の思いはその言葉をやることに責任を持ちますよということ。だから好き勝手言ってきたということは、責任を持たされ、追い詰められるような局面に立たされるのかなって、試練かなって、思ってるんです」。

 −−好きになっても口にできない

 「本質に気付けよ、という言い方をします。愛しているという言葉が言いたいだけというふりをして、愛しているという行動と信念に対して責任を持つという本当の思いを含めています。この作品のおもしろいところは、言葉がすべて符号になってしまっていること。心を分かち合うことの意味は体が知っている。愛していると100万回叫ぶよりも、体が同化した時に魔法のように相手の意味が分かってしまう。ぼけても肉体の記憶が鮮烈というタイプの愛を、2人が共有している」。

 −−そういう経験は

 「毎回ライク・ア・バージン。毎回、今度はぼけてからも持っていくだろうなという愛だと思う。毎回真剣? そうですね」。


脱イベント

 確かに世間の尺度とは少し違うかもしれないが、その言葉、考え方、そして生き方にぶれはない。これからについて聞くと、こんな言葉が返ってきた−−。

 「迷ったり、おろおろすることがない人になりたい。ある意味で、女優という職業と正反対なのかもしれないわね。ドラマの中の迷いのある人物って魅力的でしょう? そういう人を演じながら、学習して迷いのない自分になって行きたいのだと思う。だから女優をやっているのだと思います。充分強くなったら、女優でいる必要はないのかもしれませんね。迷いが多いから、そうはならないかもしれないけどね」。

 −−以前「60になったらイベントとして結婚する」と

 「イベント、と思ってましたけど、今はそうじゃない。60になってからしか理解できない人とめぐり合って、最終的に自分の終末を共有したいという気持ちがあれば。それが結婚であるならば、結婚したい」。

−−今、結婚したいという気持ちはないのか

 「自分の心の中でそういう気持ちが育ってきたら、いつでも」。


柔らかさの下に残酷さも

 ドラマ「さよならをもう一度」(92年)や舞台「卒業」で演出を担当したフジテレビ河毛俊作氏(52) 娼婦から母親まで、どんな役でもこなせるが、自分のスタイルがはっきりしている。女優としての存在感は圧倒的。女優でしか生きられない人です。デビューからずっとエイジレスというか、少女のような人。柔らかさの下にギラギラとしたものが見え隠れする。最近気配りをするようになって大人っぽくなったが、それも、少女が時々、わざと大人っぽく振る舞っているように見えてしまう。それがかわいらしく、自由奔放なところなのでしょう。


 ◆映画「透光の樹」 第35回谷崎潤一郎賞を受賞した高樹のぶ子氏の同名ベストセラー小説の映画化。北陸を舞台に、25年ぶりに再会した男女の激しく濃密な恋を官能的に描く。根岸吉太郎監督。共演は永島敏行、寺田農、高橋昌也、吉行和子ら。30日公開。


 ◆秋吉久美子(あきよし・くみこ) 本名・小野寺久美子。1954年(昭和29年)7月29日、静岡県生まれ。高校3年だった72年、松竹「旅の重さ」のオーディションで2位になり、デビュー。74年「赤ちょうちん」「妹」などの青春映画でスター女優に。ほか代表作は「あにいもうと」(76年)「異人たちとの夏」(88年)「深い河」(96年)など。今年4月、東京グローブ座「卒業」で初舞台。初監督作品「BUBU AGAIN」は12月公開予定。88年度日刊スポーツ映画大賞助演女優賞など受賞多数。


(取材・近藤由美子)

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