【第32回】
発症しても自覚ない拒食症
摂食障害(上)
10歳から20歳の女性に圧倒的に多い心療内科の疾患がある。90年代には大きな社会問題となった拒食症、過食症だ。どちらも食行動に異常がみられることから、2つを合わせて「摂食障害」と呼んでいる。
「20対1の割合で圧倒的に女性が多く、今も増えています。最近は男性にも増えてきました」というのは、摂食障害の治療で有名な九段坂病院(千代田区九段南)心療内科の山岡昌之部長。
食事を受けつけなくなる拒食症は、ダイエットをきっかけとして発症するケースが多い。やせるにつれ、より極端と思えるダイエットにはまっていってしまう。「どんどんやせて、その人の標準体重のマイナス20%以上のやせ状態が3か月以上続いたとき、これを拒食症と診断します」。
極端なやせ願望は、鏡の中の自分自身の姿さえも客観的に見られなくなってしまう。そのため、周囲の人が見ると「やせ過ぎ」であっても、本人は足も顔もふくらんでいると思ってしまう。だから、まだまだやせようと努力してしまうのだ。結果、身体に異常が起きてくる。無月経、脈が遅くなる徐脈(じょみゃく)、低血圧、低体温、背中を中心に産毛がたくさん生えてくる。
「それでも本人は病気とは思っていません。が、親が気付いて婦人科へ連れていかれます。そして、婦人科から心療内科を紹介されて受診されるのが典型的なパターンといえます」。
摂食障害は前述のような病状に周囲が気付いて受診するため、症状が進みすぎるときには危険な状況にもなる。摂食障害の合併症で生命の危機を招いたり、また、うつ状態から自殺することもけっして珍しくはない。
治療は症状に応じて「抗うつ薬」「睡眠薬」などの薬物療法に加え、入院しての栄養補給が行われることもある。が、基本は心理療法。「心の発達のゆがみによって起こるのが摂食障害ですから、心理療法が重要なのです。その柱として私たちが取り入れているのが“再養育療法”です」。
摂食障害の治療で大きな効果をもたらしている。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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