【第157回】
手術向上、5年生存率50%超
食道がん(下)
食道がんが食道壁の最も内側の粘膜にとどまっている0期であれば、体にやさしい「内視鏡的粘膜切除術」が受けられ、3泊4日程度の入院ですんでしまう。
「リンパ節に転移していますと、内視鏡での治療は無理で、この場合の標準治療(コンセンサスの得られた基本治療)は手術もしくは化学放射線療法です。病気でいえばT、U、V期です」と言うのは、東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)外科の幕内博康病院長(60)。
食道がんの手術は、通常右開胸で行われる。右側胸部を切り、ろっ骨の間を開いて食道にアタックする。食道は約25センチの長さだが、これがピーンと張りつめた状態になっているため、部分的に残すのは難しく食道すべてを切除することになる。転移しているリンパ節はもちろん転移の可能性にあるリンパ節もすべて取り除く。
「この状態では患者さんは物が食べられません。そこで、胃をつり上げて頸(けい)部食道につないで再建します。それでも、QOL(生活の質)の低下は当然あります。しばらくは以前のようには食事ができなくなり、患者さんの多くは体重が10%くらい減少します」。
食道がん手術は、消化器外科の中で最も難しいとされており、手術死亡率が2%もある。が、手術の成績は向上し、5年生存率は50%を超えるようになってきた。
この食道がんの手術にも、より体にやさしい風が吹き、「開胸、開腹しないで、胸や腹部に小さな穴(あな)を4カ所くらいずつ開けてモニターを見ながら行う胸腔鏡や腹腔鏡下手術も始まってきています」と幕内病院長は話す。胃がんで行われている腹腔鏡下手術の回復が早いように、食道がんでもその回復は早い。
その一方で、食道温存療法である「化学・放射線療法」も大きな選択肢としてある。今日、化学・放射線療法の成績も飛躍的に伸びてきている。「日本では手術と化学・放射線療法を平等に比較した臨床試験のエビデンス(科学的根拠)はありません。今、その比較試験が準備されています。」。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
|