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2004/09/13付紙面より
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剛に宿った強い意志
文化社会部 松田秀彦記者
苦悩を突然打ち明けられて驚いた。アイドルタレント堂本剛(25)。堂本光一(25)とコンビを組むKinKi Kidsのメンバーだ。ソロ歌手として行った全国ツアーの最終公演が5日、さいたまスーパーアリーナで開かれた。ファン3万人が集まった。公演前、控室で取材した。最終日を迎えた心境を聞くつもりだった。ところが剛は「アイドルとして音楽をとらえられるのが嫌なんです」と、不満を爆発させ始めた。
事務所関係者も同席した。言葉は選びながらも、自分の「覚悟」を必死に訴えた。「アイドルであることは理解してます。でもそういうことより、自分の音楽を前面に出し、聴いてもらいたい。正直、分かってくれる人に聴いてもらえばいいとも思ってます」。アイドルという色眼鏡で見られる限り、歌手として認めてもらえないと主張する。「自分をストレートに見せようとすると、ファンのお口には合わないかも。でもウソをつくのは嫌なんです」。
剛は、ミュージシャンやバンドメンバーの友人が多い。昨年取材した時も「彼らは音楽で自分を表現している。自分をさらけ出している。うらやましい」と話していた。そうしたミュージャンたちとの交流で触発された結果が、ここにきて「自分らしい音楽」を求めることにつながったのだろう。事実、ソロで歌う曲はほとんど自分で作詞、作曲していた。
公演はジャニーズ事務所のアイドルとしては異色のスタイルだった。普通はダンサーやバンドメンバーとしてジャニーズの後輩が登場する。だが、今回は剛の強い希望で、バンドメンバーは、普段は別のバンドで活動する、いわば“部外者”のミュージシャンたち。ダンサーも女性ダンサーが集まった。「“外”ではこれが普通のこと。これまでスタッフやバンドメンバーの顔も覚えることなんてなかった。それが本当に嫌だった。今回はいろんな話をしながらできた。自分の思いを相談したら『盾になってあげる』とも言われた。そういうのってうれしくて」。
勇気のいる発言だった。ファンが求めているのは「アイドルらしい音楽」。「自分らしく」という道を選べば、人気を失う危険だってある。「自分のことを分かってもらうためになら、いくらでも戦っていこうと思ってます。ジャニーズという場所にいても、音楽を前面に出して勝負できる突破口になりたい」。関係者も黙って話を聞いていた。
剛が「戦いのスタート」という公演を見た。派手な演出は抑え、歌を聴かせることに専念したシンプルなステージ。ファンは戸惑った。定番の甲高い絶叫が飛び交う雰囲気はない。曲間では自分の苦悩を打ち明けた。声援ではなく手拍子が響く公演だった。ファンを置いてきぼりにした印象もあった。それでもアイドルという殻を破ろうとする強い意志は感じた。
求められていることと、やりたいことが違うのは、社会に出ればよくあること。妥協や折り合いをつけることはつらいが、立ち向かうのには勇気がいる。少し軟弱なイメージを持っていた剛に対して、見方が変わった。「戦い」をこれからも見ていこうと思う。
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松田秀彦(まつだ・ひでひこ)
文化社会部。94年入社。編集局写真部を経て96年春から文化社会部。映画、音楽を中心に取材。東京都生まれ、千葉県育ち。35歳。
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