2時間37分37秒で46位に終わった伊藤舞(32=大塚製薬)の母校京産大(京都市)では、パブリックビューイングが行われた。

 伊藤が大学4年の時に学生部職員で、陸上部の選手の支援をしていた現在広報部の増村尚人さん(42)は「4年の仙台で行われた駅伝で調子が悪かったのに粘ってタスキをつないでいたのが印象的。入学した時は無名の選手だった。五輪が決まって本人は『小さな目標の積み重ねがリオにつながった』と言っていた」と話した。

 伊藤の卒業式前日だった。優秀なアスリート選手が学長から表彰された。伊藤もその中に選ばれていたが、表彰メンバー選出を担当していた増村さんでさえ「目立たなかった。他の優秀選手に比べて、すごくおとなしかった」と振り返る。常に謙虚な姿勢だったという。

 卒業後に入社したデンソーでは結果が出ずに退社。母校で練習を続けていた。大塚製薬への入社が決まるまでの浪人生活では、恩師の京産大・伊東輝雄監督(70)に相談。増村さんは、厳しい伊東監督からハッパを掛けられても、いつもひょうひょうとしていた伊藤の姿を見ていた。「いい信頼関係だと思った。伊東先生のことを信じているんだなと。指導者を疑わず、真面目に努力してきたから伸びたのだと思う」。伊藤の浪人時代に現役陸上部だった金子暁(さとし)さん(26)は「黙々と走る姿が印象に残っている。気持ちの持ち方とか聞いておけば良かった…」。

 リオではメダル獲得の目標には届かなかった。それでも、伊藤ならどんな経験も自らの力に変えていくだろう。