ハリルホジッチ監督は大会期間中、準備期間不足を強調していたけれど、この大会に最も準備が足りなかったのは、監督自身ではないだろうか。事前に相手の戦力や戦術を把握する作業を怠った。日本に対してDFラインを下げる北朝鮮と中国には、矢(スピード系の選手)を3枚用意した。前線にスペースがないと、永井、川又、武藤のスピードは生きない。逆に前線にスペースのある韓国戦では、矢は1枚だけでパサーを並べた。これでは相手の隙を突くことは難しい。

 東アジア杯の日程が迫っていたのに、6月のシンガポール戦後は、Jリーグの最中に約2週間、フランスで休暇を取った。再充電も大事だが、国内組の動きを生で把握できるチャンスを逃したことは、メンバー選考にも影響したと思う。

 センターバックの空中戦などが指摘されたが、国内組でヘッドの強いDFは何人かいる。また、北朝鮮戦では森重が相手とヘッドで競ったこぼれ球を拾われて失点したが、この場面は槙野がしっかり第2、第3の相手をケアしないといけなかった。しかし槙野はJリーグでもボールウオッチャーになる癖があり、ここでもその癖が出た。

 指揮官は、3年後のW杯を見据え、MF遠藤(G大阪)を外した。それなら、この大会も20代後半の選手を呼ぶより、リオ五輪世代の選手を多く呼んで、経験を積ませるべきだった。DF昌子、植田を呼び、丹羽を中央で使った方がよかった。(日刊スポーツ評論家)