緑と、笑顔と、老若男女。気温1度に満たない寒さの中でも心があったかくなるような、そんなスタジアムでした。

 3月14日、故松田直樹さんの誕生日に迎えた松本のJ1ホーム開幕の広島戦。試合前、ぐるりとスタジアム内を歩いてみました。バックスタンドから、通路を通ってゴール裏へ。以前から聞いてはいましたが、本当にサポーターの年齢層が幅広い!白髪のおじいちゃんがユニホーム姿で座っていると思ったら、子どもがフランクフルトを食べていたり。みんなが緑色の応援グッズを身につけて、わくわくしながら試合開始を心待ちにしている。スタジアムは、明るい表情があふれていました。

 ちょうど松本平広域公園総合球技場(アルウィン)の通算100万人目の入場者も、4歳の男の子。お父さん、お母さんと一緒に入場して来ました。5歳上のお兄ちゃんは、広島戦のエスコートキッズとして選手と入場。まさに全員で松本を応援しているファミリーでした。

 なぜ、こんなに年齢層が幅広いのか。松本の創設時から携わっている八木取締役に聞くと、年齢が高い方は地域リーグ時代から応援していて、ずっとスタジアムに足を運んでいるんだそうです。「お年寄りの方の、楽しみになっているのかもしれません。おじいちゃんのサポーターの方も、みんな一緒にゴール裏で跳びはねていますからね」。長年のサポーターと、Jリーグでの活躍をきっかけに応援するようになったサポーターが、一緒になって作り上げている雰囲気なんですね。

 スタジアム全体での力強い応援は、相手選手にとっては“嫌な存在”です。広島のMF森崎浩司は「サポーターを含めて、相手の圧力をすごく感じた」と言っていました。松本のDF田中隼磨にも聞いたところ、「スタジアムは最高の雰囲気でした。広島の選手と話したけど、脅威だったと言っていた」そうです。

 ピッチ内の選手だけでなく、チーム全員、スタジアムの全員、サポーター全員がともに戦っている。そんな雰囲気の中で、歴史的な初勝利を見届けたいと思います。


 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ。埼玉県育ち。10年入社。3年間サッカーを担当し、13年から五輪スポーツ担当へ。14年ソチ五輪後、再びサッカー担当に。今季は松本、川崎F、湘南を担当。最近の悩みは、くしゃみ。