がんばれ熊本ー。4月14日からの大地震で甚大な被害にあった熊本は6月に入った今も余震が続いている。4月、5月に被災したJ2熊本を取材する機会があった。九州新幹線で博多から熊本へ移動したが、車窓から見た熊本市内はいまだ屋根をブルーシートで覆う家が目立った。復興への動きは始まっているものの、被害の大きさを改めて感じさせられた。

 本拠地のうまかな・よかなスタジアムの使用めどが立たない熊本は、6月のホーム2試合をJ1鳥栖の本拠地、ベストアメニティスタジアムで行うことになった。練習場を提供する考えもあった鳥栖の好意で、地震発生以来初めて九州開催がかなう。練習不足や試合感覚の低下は否めず、5月15日千葉戦でのリーグ復帰以降、5連敗と厳しい戦いを強いられている。だが九州全体の復興への願いも込めて、佐賀で巻き返しの口火を切ってほしい。

 話は変わるが、地震の影響で熊本開催が延期され、福岡の代替会場で6月1日まで3日間実施された九州女子アマゴルフ大会を取材した。熊本国府高3年の田中瑞希は、熊本市の自宅で被災しガスや水道が止まる中で1週間、車中泊した。練習場も被災し一時、練習はおろか、ゴルフすら考えられなかったという。3連覇を目指した彼女の言葉が忘れられない。「開催してもらえた分、頑張らないといけない。最後まであきらめず粘り強いゴルフをしていきたい」。開催にあたり、ゴルフ場や大会関係者は急ピッチでコースコンディションを整えた。その尽力に恩返しする気持ちで、最後まであきらめずにプレーしていた。優勝こそ逃したが、成績上位で全国大会への出場権を得た。苦難をものともせしなかった、堂々たる姿に胸を打たれた。

 J2熊本にも一時、被害の大きかった益城(ましき)町など地元出身で避難所生活や車中泊を経験した選手がいた。それでも、避難所でのボランティア活動に励んだり、被災地域の子供らを対象にサッカー教室を開催するなど、元気と勇気を与え続けてきた。競技は違えど、多くの人の支えに感謝し、献身的に動くことに意義があるように思う。

 今後の試合は6月4日のアウェー岡山戦を経て同8日のホーム金沢戦(ベアスタ)を迎える。力強く前進する限り、勝利の女神がほほ笑む日は近い。【菊川光一】


 ◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市生まれ。福岡大大濠高-西南大卒。93年入社。写真部などを経て現在報道部で主にJリーグなど一般スポーツを担当。プロ野球等のカメラマンも兼務する“二刀流記者”。スポーツ歴は野球、陸上・中長距離。