湘南が第2ステージ(S)に入り、降格圏を脱出した。第1Sの第3節以降、ずっと降格圏に沈んでいたが、徐々に調子を上げて現在、年間順位は14位。どん底だったチームを、選手の心を奮い立たせている“お守り”がある。

 緊張感が漂う試合のロッカールーム。その入り口にはホーム、アウェーにかかわらず毎試合、フラッグが掲げられている。「サポートするから」。「信じてる」。そこにはフロントスタッフ約20人の激励の言葉、気持ちが書かれていた。現場で一緒に働くことは少なくても、同じチーム。選手たちは、裏方で支えてくれる人の熱い思いが詰まったフラッグを目に焼き付け、ピッチへと向かう。

 開幕から7戦勝ちなしだった4月23日だった。クラブ事務所でのフロントスタッフによる朝のミーティング。坂本紘司営業本部本部長(37)が切り出した。「フロントもチームを支えていこう」。選手時代にはミスターベルマーレとも称されたクラブの栄光も挫折も知る坂本氏が熱く語った。フラッグにフロントスタッフで、寄せ書きをした。どれだけ選手の力になれるか分からないが、少しでも支えになりたかった。

 思いは結果に表れた。開幕から泥沼を歩んだチームは、フラッグがロッカールームに掲げられて以降、5勝2分け6敗。復調の兆しを見せている。

 選手にとっては、大きな後押しになっている。DF三竿雄斗(25)は「フラッグを見て、モチベーションが上がるし、スタッフと選手一体となってやれるのが、このチームのよさ。力になっている」。MF神谷優太(19)も「応援されているという気持ちが強くなった。やらないといけないんだなと試合に気持ちを高めていける」と言う。曹貴裁監督(47)は「それ(フラッグ)で勝てるわけではないけど、みんなで一緒になって戦うんだというのは大事」と話す。

 まだ降格圏16位の名古屋とは勝ち点差わずか2。負けられない戦いは続く。ただ、今の湘南には強い一体感がある。【上田悠太】


 ◆上田悠太(うえだ・ゆうた)1989年(平成元年)7月17日、千葉県市川市生まれ。明大卒業後、14年に入社。文化社会部ではTBSなどを取材。昨年11月にスポーツ部へ異動。サッカー班で湘南、柏、千葉を担当。三村監督時代からファンである広島カープの優勝の25年ぶりリーグ制覇に期待を寄せる。