いよいよJリーグの2017年シーズンが始まる。1シーズン制に戻り、動画配信のDAZN(ダ・ゾーン)とは10年2100億円超という巨額の放送権料の契約を結ぶなど「改革」の年。先日、私はJ1、J2、J3の計54クラブが参加した合同会見「Jリーグ・キックオフカンファレンス」に出席した。全クラブが一堂に会する場を取材ができる機会は、なかなかない。各クラブの監督と代表として参加した選手に話を聞いた中で、心の中に「改革」が起こっていると感じた2人に、開幕戦からぜひ注目してもらいたい。

 ◆セレッソ大阪FW杉本健勇(24)

 今季、3年ぶりにJ1に復帰したC大阪の背番号「9」。FW柿谷やMF清武らタレントぞろいの前線で欠かせない存在だ。昨季はJ2で41試合14得点。結果も残したが、チームの精神的支柱として成長したことも大きかった。杉本は「昨年から自分の中で変わってきた。どういう言葉を使えば注目してもらえるかを考えるようになった。強気な発言をすれば自分自身にもプレッシャーがかかる」。メディアに対してだけでなく、チームに対してもそうだった。

 下部組織育ちで、どちらかと言えば自分の好きなようにやってきた。それが、仲間のこと、クラブのことを第一に考えるようになった。「このクラブは選手が注目される。それはいいことやけど、やっぱりクラブが注目されやなあかん」。杉本は真剣なまなざしで言った。

 「例えば清武選手が帰ってきて、山口選手と現役日本代表が(2人)いる。柿谷選手もいるし、セレッソはいい選手が多い。だけど鹿島やレッズのように『クラブ』が注目されることはない。注目選手がいてその後にセレッソの名が出てくる。いつまでもそれじゃ、クラブの伝統を築きあげるためには良くない。そのためにはタイトルを取らないといけない。タイトルを取らないと変わらない」

 クラブに対する気持ちがひしひしと伝わってきて、目を見て話を聞いていると思わずペンが止まりそうだった。杉本は大好きなC大阪を伝統クラブにするため、J1の舞台で結果を出し勝利へ導くだろう。

 ◆J2名古屋グランパスFW佐藤寿人(34)

 広島の顔だった佐藤が新天地へ移った。「どう? 赤」と聞かれたが、赤いユニホームはまだ見慣れない。課された使命は1年でのJ1復帰。その思いがキックオフカンファレンスに出席して強まっていた。

 「今日は『ああ、J2なんだ』って見せつけられた。悔しかったら1年でJ1に戻れってことだと思う」

 この日のオープニングでは、J1選手が順番に登場しステージへ立った。開幕カードが紹介され、それぞれ意気込みを語った。その間、J2、J3の選手はフォトセッションに備えて、舞台裏で約40分間立って待っていたという。「オープニングからカテゴリーの違いを痛感したね」。佐藤の闘志に火がついた。「1年で戻んなきゃいけない。それがノルマ」。

 佐藤は広島時代から言葉に力があった。自分にプレッシャーをかけながら、どういう形で発信されるべきか考えながら話していた。だからこそ愛された。そしてこの日「名古屋のヒサト」になってから初めて会ったが、名古屋を良くするためにはどうしたらいいかを100%考えながら話していた。「俺たちはJ2にいてはいけない。絶対に1年で昇格する。そのためには何でもやる」。

 J2が甘くないことは佐藤もよく分かっている。それでもブレない気持ちがなければ、目標は達成できないことも分かっている。広島を3度J1優勝へ導いた34歳だからこそ、新天地でどんな化学反応を起こしてくれるのか楽しみだ。【小杉舞】

 ◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年に大阪本社に入社。1年目の同11月から西日本サッカー担当。担当はG大阪や神戸など関西クラブ。甲子園球場での売り子時代に培った体力は自信あり。