北海道コンサドーレ札幌が“食改革”に乗り出した。5季ぶりに戦うJ1のステージは、肉体的にも精神的にも、1試合の消耗度でJ2時代とは比較にならないはず。開幕前から相次ぐ故障者に悩まされ、5月24日時点で故障者は6人。長期離脱は4人と、笑えない状況だ。それでなくとも、2種登録の高校生2人を除けば、30人の小所帯。故障者が日々、入れ代わり立ち代わりで、20人弱でリーグ戦とルヴァン杯の陣容をやりくりしている。

 今季、他クラブから加入したある選手は「こんなにけが人が多いのは、他のチームだったら異常事態だ」と驚く。私はサッカーチームの担当が初めてなので、この言葉を聞くまで、正直、対人の多いサッカーで故障者が多いのは仕方がないのかなと思っていた。しかし、どうやら、そうではないらしい。

 この「異常事態」に、クラブ側が動いた。4月末から、25歳以下の選手は管理栄養士が監修した寮での昼食を指示され、25歳以上の選手も出来るだけ寮で食事を取るよう、無料で食堂を開放することにしたのだ。クラブハウスと選手寮が少し離れているため、それまでは出前や外食で済ませる選手も多かったそうだが、食に対する意識が少しでも高まればというクラブ側の配慮だ。

 冬季の練習を始め、アウェーでは必ず飛行機での長距離移動が強いられることなど、札幌には、環境による特殊性がある。ケアをするスタッフの数も、プロ野球から比べれば圧倒的に少ない。「依然、プロ野球のトレーナーから『サッカーって、そんなに遅れているんだ』と言われたことがあるんです」と話す大塚俊介フィジカルコーチ(35)は「さまざまなハンディキャップの中で、最良の方法は何か。そのためのフレームワークを作っていけたら」と、日々、模索中だ。

 「選手には、食事を取るところまでがトレーニングだと言っています。最終的には選手の判断で、それが、すべてではないけれど、自分の体を見つめ直すきっかけになってくれたらと思います」。新たな試みは、環境的に、より成熟したチームへの足がかりになるはずだ。

 ◆中島宙恵(なかじま・おきえ) 札幌市出身。昨年不惑を迎えた。某通信社で約10年の記者生活を経て、2011年北海道日刊スポーツへ移籍。プロ担当は、野球の横浜(現DeNA)ヤクルト、日本ハムに続いて、札幌が4チーム目。