<高校サッカー:鹿児島城西4-3青森山田>◇31日◇1回戦◇市原

 「大迫の冬」が幕を開けた。得点王候補の鹿児島城西(鹿児島)FW大迫勇也(3年)が、青森山田(青森)戦でいきなり2ゴールを奪った。前半中盤まで0-2の劣勢を強いられたが、自ら同点弾&勝ち越し点を決め、チームを4-3の逆転勝ちに導いた。既に鹿島入りが決まっており、抜群のポジショニングなど「柳沢敦2世」の片りんを見せた。

 大迫勇は豊かな才能を、同点弾に凝縮して見せた。0-2から1点を返して迎えた前半ロスタイム。自陣から右MF大迫希からのロングパスを、ペナルティーエリア右手前で、相手DF2人の間に入りこんで受けた。フランス代表アンリをまねて練習したドリブルでGKと1対1に持ち込み、右足から低い弾道で、ゴール左下に突き刺した。「まだ試合は終わってないので、あまり喜べなかった」とクールに振り返ったが、ピッチでは何度もガッツポーズをつくった。

 後半13分にも、相手の最終ラインの裏に抜け出し、左足でフェイントをかけて右足で浮かす技ありゴールで勝ち越し。鹿島の椎本スカウト担当部長は「100%ではないが、何本か良いスルーパスも出していた。まだ伸びる」と評価した。ボールタッチも柔らかく、相手DFを背負ったプレーも得意とする。

 二重のリベンジを果たした。今回が2度目の出場、前回出場の00年度3回戦で青森山田に敗れていた。現チームも3月の大会で3-2と敗北。九州と東北のプリンスリーグ王者が対決する会場には、オシム前日本代表監督も現れた。

 試合前のロッカー室、小久保監督がサプライズビデオを見せた。控え選手のほか、大迫勇の両親も登場し、母美津代さんが「とにかく頑張れ」と激励。大迫勇は「序盤は硬かったけど、ビデオを思い出してリラックスできた」とペースをつかんだ。シュート7本はもちろん両軍で最多だ。

 ハットトリックまで、あと1歩だった。野村が決めた4点目は、左ポストをたたいた大迫勇のシュートを詰めたもの。「勝つために1点1点にこだわり、ゴールを多く取るだけ」。182センチの大器は、全国制覇に向け好発進した。【佐藤千晶】