日本代表のバヒド・ハリルホジッチ新監督(62)が19日、東京・文京区のJFAハウスで、新生日本代表メンバーを発表した。6月に始まる18年W杯ロシア大会アジア2次予選を見据え、27日チュニジア戦(大分)、31日ウズベキスタン戦(東京)のメンバーで、バックアップ12人を加えた計43人を発表した。

 G大阪DF藤春広輝(26)は念願のA代表入りを、帰宅途中の駐車場で聞いた。「強化担当から連絡があった。連絡があったとき何か悪いことでもしたかなと思った」。想定外の事態で「ただただびっくり。とりあえず、うれしい」。本人はびっくりでも、力を認められての選出だ。50メートル5秒8の俊足で攻撃参加する左サイドバック。リーグでは12、13年はフル出場、昨季も25試合と3冠王者には欠かせない存在で、長友や太田と渡り合える力がある。

 一報を聞いた後、天を見上げ、喜びをかみしめた。大体大4年だった10年7月9日、病を抱えていた父末広さん(享年55)が天国へ旅立った。そのころ、夢だったG大阪からの入団オファーが届いた。実家が営む製造業を継ぐか迷っていた時、家族から父の伝言を聞いた。「自由に生きていけばいい」-。空から、代表に入るまでサッカーを続けろと聞こえた気がした。「余命1年」と宣告された父は、病気が悪化し、倒れる日まで仕事に出かけた。最後まで全力だった背中を追いかけ、諦めずにプロ5年間を走り続けてきた。

 初めてつかんだチャンス。ライバルの長友と太田には「スピードでは負けたくない」。31人の中で唯一初招集のハリルチルドレン。空からでも見えるよう、代表のピッチで大きく羽ばたく。【小杉舞】

 ◆藤春広輝(ふじはる・ひろき)1988年(昭63)11月28日、東大阪市生まれ。東海大仰星から大体大。大学2年時に総理大臣杯を制して大学日本一に輝くも、2部リーグを経験するなど不遇の時期を過ごした。11年にG大阪入り。J1通算72試合出場2得点。175センチ、60キロ。