18年W杯ロシア大会でエースの座を狙うFW宇佐美貴史(23=G大阪)が、W杯に憧れたのは02年日韓大会からで、08年の豊田国際ユースではU-16(16歳以下)ブラジル代表と戦い、世界の壁を知った。今日16日のアジア2次予選の初戦となるシンガポール戦(埼玉)に向け、15日は試合会場で最終調整。宇佐美は左FWで、W杯予選初先発が確実になった。

 W杯という憧れの舞台が目指す場所に変わったのは、02年日韓大会だった。

 「98年もなんとなく覚えているけど、がっつり物心がついて、サッカーにのめり込んでた時期が日韓大会。とにかく毎日見ていた」

 当時、小4の宇佐美少年はブラジル代表3R(ロナウジーニョ、ロナウド、リバウド)に心を奪われた。

 「特に、リバウドがめっちゃ好きで。『うわ、W杯のピッチ立ってみたい』って感じた。気に入ったら何でも取り入れるタイプやったから、当時は髪形はベッカム。プレースタイルはリバウド。喜び方はロナウジーニョ。ビデオを自分で録画して、ラベルを貼って、何回も見るのが大好きやった。『すり切れる』まで見るってこういうことなんやな、ってぐらい」

 しかし、夢と現実の大きな違いを思い知る出来事があった。08年豊田国際ユース。U-16日本代表として出場した時だった。

 「ブラジル代表と対戦して、その時(同年代の)ネイマール、コウチーニョがいた。初めて世界のレベルの高さを痛感した。単純にこの2人すごいな、何でもできるって。(翌年の)U-17W杯でまた対戦することになるけど『もう、こいつらに負けたくない』って思ったのは覚えている」

 ライバルの2人は、無数の攻撃パターンを持っていた。負けないよう、宇佐美も頭にたたき込んだ。

 「(攻撃の)映像を何回も、何回も見て頭にすり込む。暇があったら、昔のやつをYouTubeで検索して、目つむったら、再生できるくらいまで自分の中に落とし込む。脳内のハードディスクにプレーを保存していく」

 顕著に表れた一戦がある。5月27日のアジア・チャンピオンズリーグのFCソウル戦でパトリックの先制ヘッドを演出した左クロス。中央でボールを受け取り、ドリブルで左サイドへ流れた。

 「あのとき、本当は中央をそのまま進んで打ちたかったけど、同じパターンをアウェーのFCソウル戦で外していた。そしたら、突然『(元川崎F、鹿島の)ジュニーニョって左足で上げるクロス得意やったな』と思い出して。頭の中に、ジュニーニョの左クロスに大迫くんが頭で合わせている映像が浮かんだ」

 12、13年と鹿島に所属したブラジル人FWジュニーニョは、日本代表FW大迫とともにプレー。そのときの得点シーンも頭の片隅に「録画保存」していた。宇佐美はこうして脳内で1人会話を重ね、ゴールに結びつける。すべては、ロシアで主力として活躍するため。磨いてきたのは技術だけではなかった。「やっぱりW杯に出たい」。強い思いが次世代エース候補の原動力になっている。【小杉舞】