<アジア大会・サッカー:日本1-0北朝鮮>◇女子決勝◇22日◇天河体育場

 なでしこジャパンが、アジアの頂点に立った。北朝鮮と対戦した日本女子代表は後半28分、DF岩清水梓(24=日テレ)が右CKを頭で決めて先制。3連覇を狙う北朝鮮の猛攻に今大会無失点の守備陣が耐え抜いて、1-0と競り勝った。前回大会決勝でPK戦負けした相手に雪辱し、アジア大会で男女を通じて初の金メダルを獲得。来年6月のW杯ドイツ大会、12年のロンドン五輪に弾みをつけた。

 18人の「なでしこ」が金メダルを胸に最高の笑顔を咲かせた。初のアジアの頂点。女子日本サッカー界の悲願成就を17年越しで達成したエースのMF沢穂希(32=日テレ)は「感極まって泣きそうになっちゃった。アジアのチャンピオンはなかったし、本当にうれしい。オリンピックかなと思わせてくれた重みのある大会でした」とポケットに大事にしまった金メダルを見つめ直した。

 0-0で迎えた後半28分、DF岩清水のヘッドで決勝点を奪った。MF宮間のCKに「きた、という感じ。正直驚きのほうが大きい」と振り返る貴重な1点となった。身長162センチの小さなセンターバックはこのチームを「根性」と表現した。「あきらめない気持ちは今までで一番だった」のハングリーさが根本にあった。なでしこリーグといっても完全なプロ選手はごく一部。08年の北京のときにはスケートリンクでアルバイトしていた岩清水だけに、厳しい環境での生活とサッカーができる喜びが成長を促進させた。

 北朝鮮は06年ドーハ大会の決勝でPK負けを喫した因縁の相手だった。以降3度の対戦では1度も負けてはいなかったが「アジア大会の借りはアジア大会で」が合言葉となっていた。主将の宮間も「この舞台に立てなかった先輩たちの分まで頑張ろう」と20歳前後の若手たちをピッチ内外で鼓舞した。相手の猛攻に何度もピンチに立たされた。GK山郷の好セーブ、バーにも救われた。ブーイングの中で、執念を見せた。

 アジアの頂点は、これからの飛躍の始まりだ。激励に訪れた上田栄治元監督(現日本協会特任理事兼女子委員長)は「本格的強化から10年かかってようやくたどり着いた。これからは世界の舞台で戦えるステップにしなくては」と期待を寄せた。

 来年6月にはドイツで女子W杯が開催。12年ロンドン五輪予選も迫っている。FW永里、安藤ら欧州組に加え、若手のFW岩渕らも合流することも予想される。沢は「これで満足することなく、これを通過点にしなくてはならない」。しっかりと世界を見据えた。【鎌田直秀】