【済南(中国)29日=鎌田直秀】なでしこジャパン大ピンチ!

 ロンドン五輪アジア最終予選まであと3日という直前に、なでしこが練習中止という憂き目にあった。それも、中国入り後の初練習が、激しいカミナリと豪雨によって中止となるハプニング。メーン会場の済南オリンピックスポーツセンターに隣接するサブグラウンドで練習する予定が、開始直前からの激しい雷雨により、安全面を考慮し佐々木則夫監督(53)は中止決断を余儀なくされた。ピッチには約15分で水が浮き、稲光と雷鳴におびえた表情の選手もいた。出ばなをくじかれる、散々の始動となってしまった。

 宿舎を出発したときには晴れていた中国の空が、瞬く間に真っ黒な分厚い雲に包まれた。なでしこジャパンの練習場到着わずか5分前に大粒の雨が落ち始めた。雨をしのげる場所で選手たちはアップを開始したが、到着してからわずか約10分後にはピッチに水が浮いた。会場の外も、くるぶし付近まで足が水につかる大雨だった。

 30度以上あった気温も急激に下がり、20度以下と寒さを感じるほど。カミナリの音も次第に大きさを増し、選手らは不安な表情を浮かべ始めた。耳を覆いたくなるほどの雷鳴の連続。報道陣も一斉に客席下のコンコースに避難。空が青白く光った直後の豪音に中国人メディア女性が悲鳴をあげるほどだった。

 1時間近く天候回復を待ったが、佐々木監督は「芝の状態も良くなかったし、雨で滑ってケガしそうだったので」と、練習中止を決断した。報道陣から傘を借り、コーチ陣とともに準備をしてあったボールやマーカーを急ぎ足で片づけた。

 MF宮間は「雨は想定していなかったけど、中国はいろいろあるんで…。試合の日も雨かもしれないので、できればやりたかった」と無念さをあらわにした。「それ以上に練習が出来なかったということに、みんなが変なプレッシャーにならなければいい」と、メンタル面での悪影響を気に懸けていた。

 この日は試合形式の練習で、タイ戦の先発メンバーを確定させる狙いがあった。「ある程度は決まっているんだけど、あと1人、2人がどうなるか」。佐々木監督は空を見上げながら首をかしげた。初戦のタイ戦ではDF岩清水が出場停止。センターバックコンビのDF熊谷も「そろそろ(代役が)見えてくるんじゃないかと思っていましたけど…。試している状況ではあったので、まだまだ合わせていけるなとは思っていた。失敗する中で課題も見えてくる」と、残念がった。

 前日28日には岡山から約13時間かけて中国済南市まで移動したため、ほとんど体を動かしていない。この日の午前中も散歩だけの予定だった。ただ、宿舎近くの広場を発見し、スパイクは履かずアップシューズだったが、遊び感覚の楽しい雰囲気で約1時間、ボールを使ったのが唯一の救いだった。

 中国メディアに囲まれた丸山は「言葉も何を話しているのか分からないし、中国もう嫌」。ストレス発散をグラウンドに求めていたが「コンディション回復がメーンとプラスに考えたい」と、何とか気持ちを奮い立たせようと努めていた。

 佐々木監督は「あさって(31日の試合前日)は15分くらいで非公開に。勘弁して下さい」と言った。なかなか落ち着いて練習に集中できない。予想されたこととはいえ、練習ができない選手たちの心境は穏やかではない。