【済南(中国)30日=鎌田直秀】MF宇津木瑠美(22=モンペリエ)が、エースMF沢穂希(32=INAC)の「実戦魂」を継承する。なでしこジャパンは明日9月1日のロンドン五輪アジア最終予選初戦、タイ戦へ向け、現地で練習を行った。前日は雷雨で中止になったため約2時間体を動かした。タイ戦を想定した紅白戦では、控えに回る沢のボランチの位置に宇津木が抜てきされた。チーム屈指の技術を武器に「試合で結果を出してこそ」の沢の教えを胸に刻んでピッチに立つ。フランスで磨いた「広い視野」が、なでしこの攻守を操る。

 タイ戦を想定した紅白戦の主力組には岡山合宿と同じく、MF沢の位置に宇津木が入った。MF田中明日菜(23=INAC)とダブルボランチを組んで攻守の軸に。ポニーテールの黒髪をなびかせて、ロングボールをFW永里優へ。前線のスペースには運動量のあるFW川澄を走らせた。さらには自ら約40メートルを一気に駆け上がりDFラインの裏に抜け出す場面も。今回は控えに回るMF宮間、大野、阪口、沢のW杯優勝を支えた中盤の攻撃にも、細い体を張って守り抜いた。

 宇津木

 (田中)明日菜とは初めてですけどやりやすい。私が少し守備的になってバランスをとっていきたい。W杯ではベンチで学んだことがある。チャレンジャー精神は、ベンチの私たちだけが持っている。

 大一番で沢の教えを実践する。日テレ所属時代に約7年間、沢の近くで多くを学んだ。最も印象的なのは「練習は試合で結果を出すためのもの」というアドバイス。「私は練習では一番上手ですよ」と自ら言うように、試合で結果が出ず、代表でも出場機会に恵まれなかった。W杯ドイツ大会も2試合11分の出場だった。タイ戦はその悔しさと、汚名を返上する最高のチャンスでもあった。

 試合で18年間結果を出し続けてきた沢の背中を追うため、同7月、フランスのモンペリエへ移籍した。より厳しい環境での意識改革が狙いだった。複数のポジションをこなせるオールラウンダーが、通訳も付けず、エゴイストが多い選手たちの中で、自分の武器を磨くことに力を入れた。

 宇津木

 フランスは個が強い。FWなんて自分が試合に出るために練習でパスもせずシュートを打つ。私はそんな個の強い仲間を生かせるような「視野の広さ」のスペシャリストを目指しています。沢さんのようには誰もなれない。でも私にしかできないことはたくさんあると思う。

 佐々木監督も「ここで良い動きをしてくれれば、今後も使える」と、ボランチの選手層アップに期待を寄せていた。

 ◆宇津木瑠美(うつぎ・るみ)1988年(昭63)12月5日、東京都生まれ。兄の影響で2歳からサッカーを始め、川崎ウィングス-川崎Fジュニアを経て01年日テレ・メニーナ入団。02年にはベレーザに昇格し、日テレでは沢や大野らとともにプレー。昨年7月にフランス・モンペリエ移籍。16歳から日本代表入りし、国際Aマッチ45試合5得点。姉の宇津木有香とめぐみはフットサル選手として活躍。168センチ、63キロ。