東京の日本代表FW武藤嘉紀(22)が主役の座を奪った。川崎Fとの「多摩川クラシコ」をホームで迎え決勝点を決めた。本拠地で先制を許し、相手エースFW大久保にカズダンスを踊られる屈辱の展開。DF太田宏介(27)が決めた同点FKのきっかけをつくると、終了3分間に頭で勝ち越し。今季2度目の3連勝でチームを2位に押し上げた。

 ダンスにはダンスを。満員御礼の多摩川クラシコ。主役は武藤だった。後半42分。自ら得たFKの場面、太田のキックにニアで頭。「ファー(遠い)サイドにいくのがチームの戦術だったけど、前半からファーにいっていたので」と敵を欺くと、森重の第2子誕生を祝う揺りかごダンスを披露。前半に見届けた大久保のカズダンスを「ホームでああいうことをされると、悔しさもまた倍になる」。踊られて、踊り返した。

 反撃のスイッチを入れたのは武藤だった。後半19分、カウンターから相手2人にドリブルで仕掛けた。ファウルを誘発し、相手DF車屋は2度目の警告を受け退場。数的優位の状況となったチームは勢いを増した。その7分後に、ポストプレーで再びファウルを誘い、得たFKを太田が決めて同点。決勝点となったFKも武藤がつくったものだった。

 チェルシーに続きマインツからもオファーを受け、22歳にして注目を一身に集める。今夏の移籍について「決めることに焦りはないし、まだ答えを出していない」。オファーを受けたイングランドの名門とすでに交渉の席に着き、自身の評価に耳を傾けた。「自分が成長できる場所はどこか?」という考えのもと、疑問に思ったことは英文メールでチェルシー側とやりとりをし、見極めている。「目の前の試合に集中することだけ」と試合になれば、この役者ぶりだった。

 3試合ぶりのゴールで3連勝に導いたチームは、2位に浮上。着々と積み上げた勝ち点は3差で浦和の背中を追う。23日間で7試合の超過密日程は、残すところあと2試合。「とにかく休むしかない。あとは気力。疲れていると思わなければ疲れない」。右膝にはまだ痛みを抱える満身創痍(そうい)。勝利とゴールが、今の武藤を癒やしてくれる。【栗田成芳】