東京が首位浦和に肉薄した。日本代表FW武藤嘉紀(22)が、後半3分にプロ初のPKを決めて加点し、同7分に左クロスを決めて、開幕戦以来の1試合2得点。仙台を下して連勝を4に伸ばし、試合のなかった浦和と勝ち点で並んだ。

 蹴る直前、ボールから11メートル先にいるGKに向かってつぶやいた。「ありがとう」。後半3分、武藤にとってプロ初のPK。置いてあったボールを仙台GK六反が置き直してプレッシャーをかけてきた。自分で再び置き直すよう主審が促したが、首を横に振った。「あそこで置き直したら自分の負け」。普段は森重が務めるキッカーを譲られ、強気でいて冷静だった。蹴る瞬間「動いたのが分かった」と、GKの動きとは反対にやや左に蹴り込んだ。

 2点差で勝っても首位浦和に得失点差で及ばない。首位浮上に必要な3点目を後半3分に決めた。左サイドを突破した太田の左クロス。右足で踏ん張り、体の軸はぶれずに左足を振り抜く左足ボレー。この時点で、浦和に得失点差で並び、総得点で上回った。連戦が続く疲労を考慮され、後半40分に退いた後、チームが2失点。「いらない2失点だったけど、反省材料にできる。勝てたことが素晴らしい」。首位には届かなかったが、今の武藤は自信に満ちあふれている。

 チェルシーに続きマインツからも正式オファーが届き去就が注目される。実は、マインツ関係者によると、4月下旬にマインツとは交渉を行ったという。マインツの強化スタッフ、マインツ側の代理人、東京、武藤の4者が集まり、主に評価を聞いた。即戦力クラスの高評価を受け、海外でやっていける自信が沸き上がってきているところで、J1でこの活躍。今後、クラブ間で交渉が継続されるが、10戦8発という数字に、興味を示している他の欧州クラブが、武藤獲得に参戦する可能性は十分にある。

 川崎FのFW大久保を超える44試合目での20点目は、J1史上歴代日本人5位となるスピード到達というおまけもついた。得点ランクでも宇佐美に続いて2位と肉薄。「今、サッカーを一生懸命やっているのは、海外移籍するためじゃない。東京で優勝したい気持ちが強いから。今はそのことだけを強く思う」。武藤とともに、東京が少しずつJ1を席巻していく。【栗田成芳】