川崎FのエースFW大久保嘉人(33)が、名古屋戦で自身3度目のハットトリックを達成した。前半45分、後半22分、ロスタイムとすべて右足でゴールを奪った。J1通算得点を152に伸ばし、中山雅史の最多157にあと5と迫る3位タイ。今季19得点で、得点ランクでもG大阪FW宇佐美貴史を抜いて単独トップに躍り出た。日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督が視察する中、抜群の決定力を見せつけ、チームも大勝した。

 これがエースの底力だ。大久保が3年連続得点王へ加速した。前半ロスタイムのミドル弾を皮切りに3得点。「点差も開いていたし、2点決めた時に(ハットを)狙っていた」。3点目はGKと1対1の絶好機で「外すイメージしかなかったけど、自分を信じて思い切り打った。入って良かったです」と振り返った。

 前兆はあった。17日の練習中、大久保の蹴ったボールがチーム保有の2トントラックに当たりフロントガラスを破壊。チームメートは「吉兆」のゴールを予言していた。1点目のミドル弾に、大久保は「あれではフロントガラスは割れない。弱かった。ガラスを割ったときの方が当たりは良かった。コースが良かった」と周囲を笑わせた。

 川崎Fに来る前の12年までは通算得点89。「150点なんて届かない数字だと思っていた」。川崎Fに加入した13年、MF中村ら中盤からのパスが激増。好機をしっかり決め26得点を挙げ、得点王に輝いた。14年も18得点で2年連続の得点王に。「シュートの感覚は変わってないけど、チャンスが多くなったこと、自信を持って打てるようになったことが大きい」と仲間への感謝を口にする。

 JFLのアスルクラロ沼津で現役復帰した中山が持つ、最多157点まであと5点。前人未到の3年連続得点王も視野に入るが「過去に2度(得点王争いを)経験しているから。他の人より経験があることが強み」とプレッシャーはない。

 「御前試合」でのハットトリック。3点目はハリルホジッチ監督が帰路についた後だが、抜群の存在感は十分アピールした。その指揮官は、大久保の実力を認めた上で「年齢」を理由に代表招集を見送る方針を公言している。大久保は「年齢のことを言われたらどうしようもないけど、自分はJリーグでやるだけ」。めげずに、大きな目標に突き進む。【岩田千代巳】

 ▼ハットトリック 川崎FのFW大久保が名古屋戦で達成。今季J1で6度目、通算215度目。大久保はC大阪時代の04年9月19日の市原(現千葉)戦、川崎F移籍後の14年9月23日の大宮戦に次いで自身3度目。いずれも9月に記録。ハットトリック3度は歴代9位タイだが、1試合2得点以上の「マルチゴール」は今回が32度目で、中山のJ1記録の33度にあと1。