元日本代表が、Jリーグの「レジェンド」になった! 横浜MF中村俊輔(37)はアウェーの仙台戦で直接FKを決め、J1史上初となるFKでの得点数を20の大台に乗せた。試合も中村の2得点に絡む活躍で、快勝した。

 「黄金の左足」が輝いた。2-1の後半32分、ゴールまで約20メートル、やや右。中村の蹴ったボールは、186センチの仙台DF渡部が跳び上がったわずか数センチ上をすり抜け、ゴール右隅に飛び込んだ。仙台GK六反の逆を突くニアサイド。「駆け引きした」というように、蹴る前にフェイントのようにステップを踏み、六反が動くのを見逃さなかった。

 主将として、チームを思う気持ちが結んだゴールだった。今季は監督が代わり、チームも世代交代を進ませながらシーズンを走っている。トップ下の中村も、ボランチを務めたり、メンバー外の日も。また、ケガもあって今季の出場は16試合どまり。それゆえ「悔しい思いをしている選手、30歳を超えている選手、それから若手もたくさんいる。FKが入ったのはそういうメンタルの部分」と仲間の気持ちを胸にプレーする。

 この日はMF天野純がリーグ戦初先発だったが、積極的に声をかけてフォローした。「(川口)能活さんなど素晴らしい先輩らを見てきたから」。だからこそFK20点という大記録にも、こともなげに「仲間がファウルをもらってくれるから」。本心からそう言う。

 後半19分には無回転のミドルシュートを放ち、こぼれ球から勝ち越し点も生まれた。モンバエルツ監督は「中村は偉大な選手で、違いを生み出した。存在は大きい」。第2ステージはFKだけで3得点。どれもG大阪東口、浦和西川、仙台六反と日本代表GKから奪ったものばかりだ。昨季まで横浜に在籍し、練習相手も務めた六反は「俊さんは欧州チャンピオンズリーグでファンデルサールから決めている。世界レベルの人ですよ」と舌を巻いた。

 中村に率いられ、チームは8戦連続で負けなし。ボールを自在に操る37歳の左足は、今も色あせることがない。【成田光季】

 ▼J1通算直接FKゴール 横浜MF中村が自らの持つJ1最多記録を更新する通算20点目。今季は3点目で、13年に記録した自身の年間最多4点に残り4試合であと1点とした(J1記録は10年のマルシオ・リシャルデスで7点)。これでJ1通算得点は歴代42位タイの64点目。直接FKによるゴールが全得点の31・3%を占める。