鹿島が新潟に2-1で競り勝ち、暫定3位をキープした。前半22分に今季初先発のFWジネイ(32)が先制。同点とされて迎えた後半34分に、元日本代表DF西大伍(28)が右足で勝ち越し弾を奪った。本職の右サイドバック(SB)とは反対の左SBで先発し、ゲーム主将も務めた一戦で2季ぶりのゴール。古巣新潟にも健在を示す一撃で、優勝戦線に踏みとどまった。

 左から中央のスペースに走り込んだ西が、前を走るFW金崎に叫んだ。「スルー!」。右サイドのMF柴崎からのパス。金崎が打つ振りをしてDFを引きつけ、マークをはがした西が右足を振った。1-1の後半34分。ゴール右隅に糸を引くような軌道で蹴り込み「朝、起きた時に決められる予感がした」。予言? 通りの勝ち越し弾だった。

 ベンチスタートのMF小笠原に代わってキャプテンマークを巻き、3試合ぶりの白星に導いた。過去2戦は無得点。攻撃陣に「こうやって決めるんだぞ」と、冗談めかした選手会長は、不慣れな位置でチームを救った。本職は右SB。ザッケローニ、アギーレ監督時代に日本代表入りした名手だが、負傷禍で左SBに回っていた。「利き足が右なので、どうしても中に入りたくなる」。普段はサイドに張るが、左から右足で打ちやすい位置を突き、2季ぶりの得点とした。前回ゴールも14年11月の古巣新潟戦で「まだ応援してくれる人はいる。元気な姿を見せたかった」と、健在を示した。

 先月18日には、熊本地震の被災地に物資を持ち込んだ。出身のDF植田に1泊2日で同行。現地で撮られた写真が出回ると「合成されたみたい」と、あえて“否定”。行動だけで示す男が苦しむチームを助けた。

 ACLで試合のなかった首位浦和との勝ち点差を暫定で2に縮め、直接対決も残す。「内容が良くなくても、ものにしていく力が必要」。第1ステージ逆転Vへ、3位から1戦ずつ重圧を強めていく。【木下淳】