注目の男が、試合をひっくり返した。1点を追う後半19分。広島DF塩谷司(27)は、右CKの場面でニアサイドに走り込み、豪快に右足ダイレクトボレーをたたき込んだ。さらに同24分には、ドリブルで攻め上がってチャンスをつくると、MF柴崎のシュートがクロスバーをたたいた跳ね返りを、頭で押し込んだ。

 「必死で押し込もうと思って、体が反応した。満員のお客さんを笑顔にできて、本当にうれしい」と塩谷。それまで浦和ペースだった試合は、完全に広島のものになった。同38分には、途中出場のFW佐藤が、相手のミスパスをさらってダメ押しのチーム4点目。2万5000人近くの大観衆で埋まったエディオンスタジアム広島は、歓喜に包まれた。

 14日にリオ五輪に出場するU-23日本代表に、塩谷がオーバーエージ枠で加わることが発表された。複数ポジションをこなせるマルチな才能が評価された。この試合でも、本職の守備では前半の劣勢を立て直し、後半は得点を許さなかった。攻撃面では、まったく違う形で2得点。結果で自らの強みを示した。

 五輪に向けても「自分がチームのためにできることをしっかりとやりたい。戦うこと、体を張ること、走ること」と意気込む。五輪内定で、サッカーファン以外からも注目される中、しっかりと存在感を示した。