恩師の前で全得点お膳立て! J2札幌は山形に3-1で勝利した。前半13分、FW内村圭宏(31)が倒され獲得したPKをFW都倉が決め先制。2-0の同17分には右クロスから都倉のゴールを演出し、突き放した。内村は、10年から3シーズン指導を受けた山形石崎信弘監督(58)に、4度目の対戦で初白星。チームもホーム19戦連続無敗と、19年ぶりにクラブ記録を塗り替えた。

 点取り屋らしい抜け目ない観察眼が勝利を呼び込んだ。まず前半13分、MF上里からの縦パスを受けた内村は、右サイドから仕掛けペナルティーエリアに進入した。「それまでのプレーでDFがボールに足を出してくるのが分かった。それが頭をよぎった」。ドリブルで前に出た内村の足に、読み通り山形DF渡辺の足が掛かりPKを獲得した。

 2-0の後半17分、右サイドでMF荒野のパスを受けると「DFの寄せが中途半端だった」と、一気に加速して相手選手2人を振り切った。「深くまで入ってから中に上げれば都倉が待っている」。イメージ通り、ゴール前に飛び込んだ都倉の頭に合わせ3点目を演出した。2点目のオウンゴールにつながる右CKも、自ら粘って獲得したもの。2戦ぶり先発で、しっかりFWの責務を果たした。

 相手ベンチには12年まで3年間指導を受けた元札幌の石崎監督がいた。同監督には、どんなに点を取って活躍しても毎回のように名指しで説教された。「ウッチー、常に一番良い判断をしろ」。しつこく言われ続けて培った状況を読み表現するセンスは、この日、チームの全3点を生み出す貴重な“栄養素”になった。

 これまで直接対決は3戦2得点も、2分け1敗未勝利だった。“4度目の正直”で恩師から白星を奪い「世話になったし、頑張っているところを見せられて良かった」と振り返った。試合後はあいさつに出向き、がっちり握手。31歳になってもなお、鋭い動きを繰り出すことで恩返しとした。

 さらに「(河合)竜二さんが久しぶり(13戦ぶり)の先発だったので気合が入っていた。勝ててうれしい」と加えた。調整法やケガ予防法を学ぶアニキにも白星をプレゼントし、恩返しした。

 「もう1回、J1に上がってやりたいし、まだまだ頑張らないと」。5年前、石崎監督、河合主将、エース内村でつかんだJ1切符再奪取へ-。唯一全28戦出場中の13番が、休まずチャンスをつくり続ける。【永野高輔】

 ◆ホーム連続不敗記録 札幌は山形戦で勝利し、昨年9月17日群馬戦からホーム19試合負けなしで、クラブ記録となった。これまでの最長は96年10月17日西濃運輸戦(札幌厚別)から97年10月29日ジャトコ戦(同)までの18試合連続。