ロスタイムも4分が経過した。年間順位17位の湘南は大宮に2-3で1点ビハインド。右サイドからのクロスにMF山田直輝(26)が頭で合わせたが、ボールは無情にもバーの上を越えた。その瞬間、ホイッスルが鳴った。残り2節を残し、3年ぶりの降格が決定した。

 昨年は年間8位と健闘。しかし、今季はクラブワーストの10連敗を喫するなど低迷した。

 その裏には何があったのか? まず最大の理由は主力の流出にあった。日本代表MF永木亮太(28)DF遠藤航(23)GK秋元陽太(29)MF古林将太(25)が、それぞれ鹿島、浦和、東京、名古屋に移籍。チームの屋台骨が引き抜かれる形になった。さらに誤算だったのは、2年連続30試合に出場していたMF菊地俊介(25)の離脱。3月24日の練習中に右膝前十字靱帯(じんたい)損傷し、開幕4戦出場後、リハビリ生活を余儀なくされた。この日の大宮戦で復帰したが、真壁潔会長は「軸となる選手がいなくなった」。躍進を支えていた中盤でのボール奪取、前への推進力を生み出していた選手を欠いた。成長著しいMF石川俊樹(25)や、若手のU-19(19歳以下)日本代表MF神谷優太(19)MF斉藤未月(17)などに出場機会を与え、やりくりしたが、抜けた穴はあまりに大きかった。

 2月開幕となった日程も湘南に取っては、ハンディとなった。開幕が早まったことで、補強期間も前倒し。湘南の財政規模は約15億円。J1では、いわゆる“貧乏クラブ”。強化費も限られているため、例年なら練習参加させるなど十分に適性を見てから補強するが、今年はその時間が十分に取れなかった。永木の代役として期待されていたMFパウリーニョ(27)はチームにフィットせず、出場10試合で松本に移籍。真壁会長は「中堅クラブは開幕が1週間早まっただけでも痛かった。時間との闘いに負けた」。手をこまねいている間に、必要な選手が他クラブに奪われ、補強が後手に回った。

 夏に補強したFWウェズレー(24)も本当ならシーズン当初から、加入するはずだったが、金額面で折り合わず、1度は諦めた。移籍金が下がったことで、夏に加入したが、8試合で無得点。期待外れに終わった。第2ステージは15試合で8得点。前線の精度が足りなかったのは明白だった。この日の大宮戦こそ2ゴールを挙げたFWジネイも試合前までノーゴールだった。FWキリノも5試合で無得点で大分へ移籍した。FWのブラジル人助っ人3人が誰も当たらなかった。しっかりと1人だけでも優良助っ人を見極められていたら、この事態は変わっていたはずだ。

 降格したことで、このオフにも多くの主力が引き抜かれる可能性もある。1年でJ1に復帰するためは、今年のストーブリーグが正念場となりそうだ。