昇格を知る男が帰ってきた。右膝内側側副靱帯(じんたい)損傷で離脱していたJ2札幌DF櫛引一紀(23)が25日、全体練習に完全合流した。9月19日の練習試合で負傷して以来、36日ぶりの復活となった。本来は30日熊本戦後の合流を予定していたが、監督、スタッフに志願して前倒し。5年前の11年はルーキーながら13試合に出場しJ1昇格に貢献した5番が、体を張ってチームの目標達成をお膳立てする。

 はやる気持ちを抑えることができなかった。DF櫛引は復帰初日から午前午後の2部練習をフル消化し、モチベーションの高さを示した。「もう大丈夫。あとは試合にどう絡んでいけるか。早くサッカーがしたかった。その思いをグラウンドで出せれば。次の試合は厳しいけど、いつでもいけるよう監督にアピールしたい」と意気込んだ。

 支えてくれた人たちへの感謝の思いを、プレーで表現する。「早く治してもらったセウソや伊藤ちゃんのためにも活躍したい」。本来は熊本戦後の合流を見据え調整していた。「そこまで待ったら昇格が決まってしまう。早く戻ってチームに貢献したい」と伊藤トレーナーとセウソ理学療法士に頼み込み、前倒ししての復帰を志願。2人から四方田監督と大塚フィジカルコーチに気持ちを伝えてもらい、合流が実現した。

 やり残したことがある。今季はまだ15試合711分の出場にとどまっている。リーグ序盤は後輩の進藤、後半戦は鳥栖から途中加入したベテラン菊地の壁に阻まれチャンスは減っていた。そしてプロ生活初の長期離脱。苦難があったからこそ、今やるべきことも見えてきた。「人より何倍も練習をやらなきゃ。声も人一倍出してやっていきたい」。ぎりぎりでのメンバー入りを目指しながら、脇役としてでもチームを鼓舞できる存在を目指す。

 室蘭大谷(現北海道大谷室蘭)を卒業したばかりの11年は新人ながら13試合に出場も、昇格が決まった12月3日東京戦は奈良にポジションを奪われ、ベンチで迎えていた。「自分がグラウンドでいいプレーをすれば、ケガを治してくれた人たちも評価される」。自身2度目の歓喜は、ピッチに立ち、堂々と昇格の瞬間をつかむ。【永野高輔】