堂々、日本一の宣言だ。今日30日に開幕する全国高校サッカー選手権(東京・駒沢陸上競技場)で青森山田・住永翔主将(3年)が選手宣誓を行う。合宿をしている静岡・富士宮市内で、富士山と仲間たちに見守られながら大舞台への練習を重ねてきた。本番まで全文は明らかにできないが、感謝を込めた言葉は全国大会の幕開けにふさわしい出来栄え。約3分間の宣誓を皮切りに、U-18高円宮杯に続く2つめの頂点を目指す。

 眼前に広がる富士山のように住永はドンと胸を張り、右手を挙げた。「宣誓!」。通る声は冬晴れの澄んだ空気を駆け抜け、富士山頂へと届くようだった。「しっかり練習したのは今日(28日)が初めて。こうやってみんなの前で話すとやっぱり違いますね」と笑いながらも緊張は感じさせない。充実の3分間の宣誓に、誰もが聞き入った。

 感謝を込めた。完成したのは22日。「これは入れたいというのを決めて、監督と話し合った」と黒田剛監督(46)の助言を受けながらほぼ1人で考えた。キーワードは「感謝」だ。東日本大震災や熊本地震、台風被災。そしてブラジルで起きたシャペコエンセの飛行機事故と災害や事故に心を痛めてきた。だからこそ当たり前のようにサッカーができることを大事に思い、仲間と全国の晴れ舞台でプレーできる喜びをかみしめる文言が主体となった。

 現代っ子らしく、検索をしたくなる仕掛けも盛り込んだ。「自分が好きな言葉で、一度聞いたら分からない」と宣誓の一部にはスペイン語の一節がある。内容は本番まで明らかにできないが、スペインリーグのある監督の言葉を引用した。「あえて言葉の意味を正確に説明しないことで、みんな検索して調べる。その行動をしてもらって、言葉が少しでも心に残ってもらえたら」としたたかに狙う。

 日本一への登頂宣言でもある。高円宮杯U-18チャンピオンシップで優勝。リーグ戦を勝ち抜き、ユースチームを含めた高校世代で最強となった。2冠目に向けて「どんどん高まってきた」と準備はできている。直前合宿は富士山麓で行うのが恒例で「富士山のてっぺんを見て、頂上をとりにいくんだって気持ちになる。日本一へ俺たちは登るんです」と奮い立っている。

 初戦は来年1月2日、鵬翔(宮崎代表、NACK5スタジアム)と。「1試合1試合を全力で戦います」と宣誓から1歩ずつ頂点を目指す。【島根純】