雨すら吹き飛ばす明るい笑顔が、あふれた。大宮から期限付きで移籍した札幌MF横山知伸(31)が18日、筋トレや切り返しからのボールタッチ、対人練習など沖縄1次合宿3日目の全体メニューを順当に消化した。ボランチ、センターバックを兼ねる守りのスペシャリストがチームに合流し、ちょうど1週間。J1で通算136試合を経験したベテランは、新天地で再起を狙う。

 身長184センチの高さに加え、知性を生かした展開力も兼ね備える。大宮から新加入のMF横山は、河合、上原のDF陣と一緒に時折笑みを交えながら、ボールタッチの練習に汗を流した。川崎F、C大阪、大宮と渡り歩いた男は「チームの雰囲気が違う。個人がやって当たり前という感じではなく、何でもみんなでやろうという意識が高い。部活みたいですね」と、うち解けた表情で話した。

 中高の保健体育の教員免許を持つ知性派だ。帝京(東京)から1浪して早大に入学。予備校時代は授業が終われば自習室にこもり、朝9時から夜7時まで勉強に打ち込んだ。「高校卒業時にプロから声がかからず、いい大学を出て大企業に就職して、お金持ちになりたいとシンプルに考えていた」。大手証券会社に内定したが、直後に川崎Fからオファーが舞い込み、再び夢を追いかけた。

 覚悟を抱いて、津軽海峡を渡った。サッカー人生のほとんどをJ1で過ごしたが、年間を通して活躍できたのは、大宮がJ2だった15年だけ。チームを1年でJ1再昇格へ導いた立役者は「もう1度、活躍したい。30試合は出て結果を残したい」。経験豊富なボランチとしてだけでなく、フィジカルに恵まれたセンターバックとして、左ひざの靱帯(じんたい)部分断裂で離脱したDF増川の不在を埋める活躍が期待される。「河合さんらと競争になるけど、高さや足元の技術をアピールしたい」。新天地で狙うのは、キャリアハイだ。【中島宙恵】