決勝は名門対決だ。清水東(中部2位)は2-1で常葉大橘(中部1位)を下し、25年ぶりの優勝に王手をかけた。1-1で迎えた前半33分にDF永島周汰(3年)が強烈ミドルで決勝点。中部地区決勝で敗れた相手にリベンジした。連覇を狙う静岡学園は1-0で浜名(西部1位)に勝利した。決勝は6月4日、袋井・エコパスタジアムで行われる。

 清水東が一丸で勝利をつかんだ。1-1の前半33分。DF永島は、味方が落としたボールに合わせ、右足を振り抜いた。ゴール約20メートルの位置からの弾丸ミドルはゴール左上にズドン。瞬間、ベンチに向けて走りだした。受験勉強に専念するため、今大会で引退する控えの3年と喜びを分かち合うためだった。「少しでも長くサッカーがしたかった。入って良かったです」。仲間の思いも込めた一撃が決勝点になった。

 後半は守勢に回ったが、粘って走る伝統のスタイルで守りきった。同校OBで指揮を執る長沢和明コーチ(59)も「よく頑張った」と言った。磐田の初代監督で女優長沢まさみ(29)の父。県内外で知名度の高い長沢コーチは、就任3年目で現3年生は1年時から指導している。当初を「全然ダメだった」と振り返るが、「止めて」「蹴る」の基本を徹底しつつ、OBならではの視点で伝統の重みも伝えてきた。

 日曜日のこの日もスタンドには500人以上の全校生徒が集まった。東京から応援に駆けつけたOBもいたという。勝利を喜ぶスタンドをながめ、長沢コーチは「うちはそれだけ関心を持ってくれる人が多いということですね」と感謝の言葉を口にした。

 全国選手権6度出場の清水東だが、県総体での決勝進出は19年ぶりで、勝てば25年ぶりの全国総体出場になる。相手は優勝候補の静岡学園。DF小林誉貴主将(3年)は言った。「全国に出て名門復活と言える。期待してくれる人のためにも勝ちます」。

 難敵を撃破し、長く閉ざされた扉をこじ開ける決意だ。【神谷亮磨】