正月の風物詩として、ほぼ毎年、サッカーの天皇杯決勝は元日に開催されてきた。今回、日程が変更となった理由として最も大きかったのが、選手のコンディション管理だった。例年、多くのJリーグクラブは1月下旬から、新しいシーズンに向けた活動、キャンプを開始する。

ただし、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)や、そのプレーオフに出場することになれば、さらに始動を早める必要が出てくる。

2020年には鹿島が天皇杯決勝を戦った後、わずか6日間しかオフを取れずに再始動。元日まで戦うと、サッカー選手にとって名誉なことではあるが、一方で、選手が十分な休養を取れないという課題があった。

こうした状況を受け、Jリーグと選手会が中心となって天皇杯の日程を前倒しすることを、大会主管である日本協会に持ちかけた。選手の負担を軽減するのは重要である一方で、普段はサッカー観戦をしない多くの人々の目にも届く「元日決勝」を失うことのリスクもあった。

現在は日本代表戦でさえワールドカップ(W杯)アジア最終予選では、アウェー戦は地上波放送がなくなっている。サッカー人気が下火になってしまっては、本末転倒になりかねない。

それでも選手の状態を第一とし、最終的に、11月にW杯カタール大会を控える来年までの2大会で、ひとまず日程を前倒しすることに決定。それ以降は再検討となった。

サッカー界を取り巻く環境は変化を続けている。参加する大会が増え、アジア・サッカー連盟(AFC)がACLを欧州主要リーグのカレンダーに合わせた秋春制での開催に変更する検討も開始している。

仮に本格的に現在の春秋制から秋春制へと変更が進めば、国内の日程についても、さらに対応が迫られる可能性が出てくる。

世界の潮流に合わせつつ、サッカー人気を高め、選手を大切にし、なおかつ競技力を向上させていく-。天皇杯の日程変更は、簡単ではないかじ取りを求められる日本協会の1つの決断だった。【岡崎悠利】