J2降格が決まった札幌からラブコールを受けている前日本代表監督のイビチャ・オシム氏(67)が、来季の総監督就任に前向きな姿勢を見せた。22日、自宅のあるオーストリアから、6月8日以来、約4カ月半ぶりに再来日。非公式ながら、札幌側から長男アマル・オシム氏(41)に監督就任の話が持ち込まれていることを認め、自身がチームをどうサポートすべきかを熟慮していると発言した。

 名将は新しいチャレンジに前向きだった。成田空港到着直後。入国審査場へ向かうオートウオークの上で、オシム氏は質問にていねいに答えた。

 オシム氏

 札幌がアマルを監督にしたいという話は聞いている。私がテクニカルディレクター(総監督)につくという話については…サッカー界には「○○ディレクター」という役職が、あまりにも多すぎると思いませんか?(笑い)。大事なのはチーム強化のために、毎日いい練習を準備し、いい雰囲気をつくること。そのためにどうするかが、肩書よりも重要です。

 すでにJ2降格が決まった札幌は、来季以降をにらみ、長期的な再建計画に着手。その切り札が「アマル監督、オシム総監督」の招聘(しょうへい)だった。すでに水面下で接触を図り、互いに好感触を得ているもようだ。関係者によれば、親子2人にアシマ夫人を加えた家族会議では「アマルが札幌監督に就任した場合、脳梗塞(こうそく)から回復したばかりの父が、どれだけチームに帯同できるか」という話までしているという。

 札幌の総監督就任は、小さなクラブを強化してサッカー界に一石を投じるというオシム氏のポリシーにも合っている。この日も、欧州チャンピオンズリーグで活躍する、ルーマニアのクルージュの戦いぶりを、今後の札幌に重ね合わせるように話した。

 オシム氏

 ローマに勝ち、チェルシーにも引き分けた。小さなクラブが工夫して、いいサッカーをする姿は見ていて気持ちがいい。そしてそこから学ぶことも大きい。さらに言うと、クルージュの選手のほとんどは、A代表の選手になっている。ルーマニア代表も今後強くなるに違いない。

 札幌を強くし、日本代表の強化にも手を貸したい。本格的な交渉はこれからになるが、総監督就任に向けて、今のところ大きな障害は見当たらない。