磐田MF名波浩(35)が14日、引退会見を磐田市内のホテルで行った。「左の名波」を磐田に入団した95年からの14年間貫き通し、浸透させた選手生活を振り返った。また、後継者として同じレフティーのMF上田康太(22)と、J2鳥栖にレンタル移籍中のMF船谷圭祐(22)の名前を挙げた。現役生活には悔いを残すことなく、今季終了と同時にユニホームを脱ぐ。

 引退会見に臨んだ名波は、14年前の入団会見を思い返していた。「僕の左足の下にボールがあるときは注目してくれ!」。当時、会見場に集まった報道陣を前に、まだあどけない顔でそう豪語した。「活字での『左の名波』は好きなフレーズだった。14年間で浸透できたことで、有言実行できた。入団会見よりも(報道陣の)人数が多いこともうれしい」と、一点の曇りもない表情で話した。

 今季は「現役最後の年」と決めて臨んでいた。11月6日に選手、クラブスタッフに伝えた。「中山さんに限らず、すべての人に『まだ早いんじゃないか?』と言われた。でも、中山さんは僕の体の状況を知っている」。もう、右ひざはまっすぐに伸びない。中山もこの日「(名波の)引退はおれにとって悲しいし、大きなこと。でも本人が決めたことだから尊重したい」と、年下の戦友を気遣った。

 涙はなかった。「後継者候補」として自身と同じ左利きの上田と、鳥栖にレンタル中の船谷の名前を挙げた。「この2人は、これからのジュビロを引っ張っていく選手。後継者という言葉が合うか分からないが、中心選手に育ってほしい」と、期待を込めた。いつか必ず、指導者として磐田に戻ってくるつもりだ。未来のジュビロを担う若手の成長を誰よりも願っている。

 今季第31節終了時点で、J1通算313試合に出場。99-00年には世界最高峰のセリエAでプレー、昨年はJ2も経験した。あらゆるカテゴリーでファンを魅了した不世出の天才レフティーが、もうすぐ波瀾(はらん)万丈の現役生活の幕を下ろす。【栗田成芳】