名古屋FW杉本恵太(26)が17日、中部国際空港発の航空機でポルトガルへ「武者修行」に出掛けた。現地では1部リーグ上位の強豪クラブで約1週間練習参加する予定。初参戦のアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)で各国の強豪と戦う09年の開幕を前に、オフを利用し自費で渡欧。レベルの高い欧州でスピードに磨きをかける。

 まだ夜も明けきらない早朝7時前。杉本がスパイク3足を詰め込んだ荷物を転がし、中部国際空港にやって来た。

 愛する家族とは空港外で“別れ”をすませてきたという。単身、搭乗手続きを行うその表情はトレードマークの笑顔ではなく、戦いを前にした緊迫感にあふれていた。

 飛行機を2度乗り継いでポルトガルまで飛び、現地で待つ代理人と合流。その後、同国1部の強豪で約1週間練習に加わる。受け入れ先は、搭乗時点で代理人が最終調整中だったが、UEFA杯出場圏内に位置する強豪が第1候補だという。日本はオフだが欧州はリーグ真っ盛り。練習とはいえ、本場でJ最速ともいわれる快足がどこまで通用するのか肌で感じることができる。

 「いいものを得て帰ってくれば、ボクにとってもそうだし、チームにとってもプラスになる」。

 昨年12月の契約交渉で、クラブ側にオフの欧州クラブの練習参加を申し出て、OKをもらった。今回は移籍を前提としたものではなく、あくまで「世界レベル」を肌で感じて成長し、名古屋に財産を持ち帰るのが目的だ。

 昨季序盤は終盤に試合を決める「スーパーサブ」として圧倒的な存在感を放ったが、結局先発レギュラーはつかめなかった。中盤以降は得点のペースもダウン。今季も現時点では日本代表FW玉田と新加入のFWダビの2トップという、チーム内に手ごわいライバルがいる。「去年は結局、スーパーサブで終わってしまった。今年はそれだけじゃいけない」。進化のために、欧州の空気を吸う。

 搭乗ゲートをくぐる直前のセリフに決意を込めた。「世界のスピードスターになって帰ってきます」。アジアを、Jを制するために不可欠なスピードが欧州ポルトガルで磨かれる。【八反誠】