<J1:広島2-1浦和>◇第23節◇22日◇広島ビ

 「赤い悪魔」が、泥沼からはい上がれなかった。浦和がアウェーで広島に敗れ、6連敗を喫した。広島の速攻に守備陣がついて行けず、前半だけで2失点。後半23分、途中出場したDF田中マルクス闘莉王(28)の2戦連続ゴールで1点差に詰め寄ったが、3月のナビスコ杯での対戦に続き、リーグ戦でも10年ぶりに広島に屈した。同一シーズンの6連敗は02年シーズン第2ステージ第10~15節以来、7年ぶり。90分試合での6連敗は16年ぶり2度目のチームワーストタイ記録となった。

 ブーイングの代わりに「何とかしてくれ」という悲痛な叫びが、観客席から次々と飛んだ。「心が痛い。オレらはサポーターを喜ばせなきゃいけない」。闘莉王は、うつむいたまま足早に控室へ戻りかけた選手をピッチに呼び止め、全員横一列に並んで深々と頭を下げた。タイトルと無縁だった7年前のように黒星を重ね、アジア王者になった、かつての面影はなかった。

 フィンケ監督の勝負をかけた采配も、苦境から抜け出せなかった。5月24日大宮戦以来、先発起用していたFW高原を11試合ぶりにスタメンから外し、若手のエスクデロを抜てき。出場停止明けのDF坪井とMF鈴木を加えて、悪い流れを断ち切る「風」を送り込んだ。4失点で大敗した前節柏戦後は各ポジションごとに少人数で集中的にミーティングを重ね、広島の速攻対策も十分なはずだった。

 だが、鋭い縦パスとサイドチェンジについていけず、前半26分と42分に失点。坪井は「先制点を奪われて精神的に厳しくなった」という。後半開始からは高原と闘莉王を投入し、DF陣もハーフライン付近まで上がる猛攻に出た。同23分にはFKに闘莉王が頭で合わせ、2戦連続ゴールで1点差。シュート数でも相手を上回る14本を浴びせた。それでも、最近の5試合で3勝2分けと好調な広島から勝ち点を奪えなかった。

 フィンケ監督の掲げる連動サッカーの定着を目指し、フロントは既に来季も続投させる方針を固めている。橋本社長は「後半はボールをつないで勝っていた。6連敗の中にも光明が見えた。1試合1試合、全部勝ちたい気持ちはある。でも、やろうとしていることを忘れたら何の進歩もなくなる」と復調を願った。

 次節29日の神戸戦は、警告累積でポンテと闘莉王が出場停止。戦況は依然として厳しい。「選手たちの戦う姿勢、試合に向かう姿勢に問題はない。近い将来に勝利できると確信している」というフィンケ監督。今は苦境に耐え、戦うしかない。【山下健二郎】