<J1:鹿島3-0千葉>◇第30節◇24日◇カシマ

 不振に苦しんだ鹿島が千葉に3-0で快勝し、2カ月ぶりのリーグ戦白星で暫定ながら首位に返り咲いた。FW興梠慎三(23)が前半8分に公式戦では111日ぶりとなるゴールを決めて先制。後半32分にはFW田代有三(27)がダメ押し点となる1年ぶりのゴールで突き放した。8月23日の東京戦以来の勝利で、史上初の3連覇へ向けて息を吹き返した。

 待ちに待った一撃だった。前半8分、MF小笠原のシュートのこぼれ球に反応した興梠が冷静に右足で先制点を流し込んだ。7月5日の川崎F戦以来、111日ぶりの得点。「久しぶりのゴールだったんで喜び方を忘れちゃってました」と照れ笑いを浮かべた。

 6戦勝ちなし、5敗1分けのチーム同様に苦しみ抜いた。定位置をつかんだ08年以降では最長のスランプ。速さと積極性が持ち味のプレースタイルは影を潜め「もっと自分らしく勝負していかなければ」と焦りもあった。春先に経験した先発落ちを再び味わう恐怖にも直面した。だからこそ「我慢して使ってくれたオリベイラ監督に恩返ししたかった」と指揮官を立てた。

 中盤の底で2カ月ぶりのリーグ戦勝利に貢献したのは、やはり苦労を味わったMF中田だった。小笠原をいかすため守備に走りながら、パスを左右に散らしてリズムをつくった。小笠原、本山との「黄金世代の中盤」でけん引し、「オレにとってはチャンスだった。結果が出たのは自分にも、チームにも大きい」と安堵(あんど)感を表した。

 まさにどん底だった2カ月間。紅白戦の雰囲気は悪く、オリベイラ監督が激怒したこともあった。MF野沢も「サッカーをやるのが怖くなった」と振り返ったほど。フロントもチームワーストの8連敗を記録した99年以来となる選手とのシーズン中の面接を実施。ただ、鈴木満強化部長が「99年と比べると、今回は面接でも前向きな選手が多かった」と話したように、王者の魂を捨てなかった選手の思いが白星につながった。

 だが、まだ暫定首位。3連覇へ向け、厳しい4試合が残る。小笠原は「まだ1勝。これからですよ」と気を引き締め、オリベイラ監督は「過去2年、鹿島は大詰めで伝統の力を出してきた」と言った。苦悩を乗り越え勝利をつかんだ鹿島が、史上初の偉業達成へ再加速する。【菅家大輔】