<天皇杯:仙台2-1川崎F>◇12日◇準々決勝◇ユアスタ

 J2王者の仙台が延長戦の末、J1・2位の川崎Fに競り勝ち、J1勢3連破で初のベスト4進出を決めた。延長後半3分に元日本代表FW平瀬智行(32)が決勝ゴールを挙げた。J2勢の4強進出は3大会ぶり3度目。29日の準決勝で前回覇者のG大阪と対戦する。

 健在を知らしめた。延長後半3分、途中出場の平瀬がMF関口の左クロスに反応した。DF伊藤を背負いながらバックヘッドで軌道を変えたボールはGK川島の頭を越えてゴール。「J2で51試合の長丁場を乗り越えた自信で、格上相手でも粘り強く戦えた」と喜んだ。

 鹿島時代の00年に3冠。00年シドニー五輪のエースも、股(こ)関節痛に苦しんだ。神戸を解雇された07年末に引退を決意。解説者への転身が決まりかけたが、鹿島の先輩、手倉森監督に拾われた。昨年末は入れ替え戦で磐田に敗れて号泣し「サッカー人生で初めて泣いた」。骨折を隠していた左手首の手術を17日に控えていたが、この勝利で来年1月に延期予定。「ここまで来たら優勝でしょ」と笑った。

 チームも7季ぶりのJ1復帰とJ2初優勝を決めた勢いが止まらない。大宮、東京、川崎FとJ1勢を3連破して初の4強進出。「守備して反撃するしか勝つ道はない」(手倉森監督)と、リーグ最少39失点の堅守からの速攻が武器。この日もJ1最多得点の川崎Fを封じ込めた。一丸となったのは9月23日のリーグ甲府戦。追いつかれて1-1で引き分け、控室で選手が胸ぐらをつかみ合った。怒鳴り合って1点の重みを確認して以来、15戦連続で負けていない。

 今季J2新記録の23戦連続不敗を達成したホームで川崎Fものみ込み、29日の準決勝は鹿島に勝ったG大阪と対戦する。鹿島との古巣対決は実現しなかったが、手倉森監督は「ここまで来たら優勝したい」と宣言。来季のJ1を待たず仙台が存在感を増してきた。【木下淳】