<J2:栃木0-1札幌>◇第3節◇21日◇栃木グ

 石さん“奇策”で待望の1勝だ。札幌が今季初勝利を挙げた。前半19分に初めて左サイドハーフで先発出場した新加入の内村圭宏(25)が、左足で移籍後初ゴールを決め先制。貴重な1点を79分守り抜き、完封した。攻撃時は変則3-5-2となり、サイドの内村がトップ下やFWの位置まで動く新布陣が成功。追加点を奪えず課題も残したが、ようやく昇格への1歩を踏み出した。

 石さんの顔にようやく笑顔が戻った。最少得点を守り抜いてつかんだ待望の1勝。試合終了後、普段はすぐに控室に引き揚げてしまう石崎信弘監督(52)が、珍しくサポーターからの「石さ~ん!」のエールに右手を上げた。まだ1勝。歓喜にわくスタンドとは対照的にこわばっていた指揮官のほおが、少しだけ緩んだ。

 前線で起点をつくれず無得点に終わった福岡戦の反省が生きた。「内村も中央で使いたいんだがキリノ、近藤がいるから」と悩んだ末に生まれたのが、前線の3人をすべて先発で生かすための変則布陣だった。前節の内村は途中出場ながら後半から切り替えた3-5-2のトップ下に入ってチャンスをつくった。今回はその内村の攻撃力をスタートから用いるため、4-4-2ながら左サイドのスペースを、攻撃時は、ほぼがら空きにしてでも2トップに近い中央付近まで自由にプレーさせた。リスク覚悟で挑戦した結果、前線のキリノと内村の連係から貴重な初勝利弾が生まれた。

 期待に応えた内村に指揮官も「サイド、FW、トップ下のどこでもできる。うまく攻撃時にタメをつくってくれた」と評価した。リードしながら、時間を稼げるはずの交代枠を1手、踏みとどまるほど、緊迫した中でつかんだ白星だった。

 開幕ダッシュに失敗して迎えた昨季17位との対戦。チーム全体に気負いがなかったといえばうそになる。内村は、この日の試合前、真っ先にピッチ脇に出て大の字になり空を眺めながら1人でストレッチを行った。「あれで上半身の硬さが抜けた」。18日には近藤宅で石川、藤田らと鍋を囲み“決起集会”にも参加するなど、初勝利に向け全員が気持ちを1つにして臨んだ結果が勝利を呼び込んだ。

 この1勝は、次の勝利があって意味がある。追加点が奪えず、石崎監督は「決定機を決めきれないもどかしさがあった」と反省も口にした。目標はJ1で戦えるチームになること。たった1勝で喜んでいる暇はない。【永野高輔】