<J1:仙台3-0大宮>◇第20節◇22日◇NACK

 長い、長いトンネルを抜けた!

 リーグ14戦勝ちなしだった仙台が大宮を下し、約4カ月半ぶりの白星を手にした。MFフェルナンジーニョ(29)が2得点。FW赤嶺真吾(26)の移籍初ゴールも生まれ、4月4日の鹿島戦以来140日ぶりとなる今季4勝目を、やっとつかんだ。

 派手なガッツポーズはない。終了の笛が鳴ると、選手はひざをつき、ゆっくりゆっくりハイタッチした。快勝に見えても、14戦勝ちなしの重圧と戦っていた選手は、想像以上に苦しみ、戦っていた。サポーターの歓喜の涙を見て勝利を実感した。ゲーム主将の梁は「歯がゆかった。苦しかった…。何としても勝ちたかった」と言葉をかみしめた。

 勝てなかった日々が、うそのような完勝劇だった。前半3分、約1年ぶりの今季初先発となったMF斉藤のパスを受け、梁が左クロス。ファーサイドに飛び込んだMFフェルナンジーニョがスネで合わせた。8月に入っても勝てず、W杯の日本代表のように選手だけでミーティングを開いた。そこで出た一案が、体調優先のための「練習時間短縮の要望」。やりとりを聞いていた助っ人は激怒した。「こんな勝てない状況で練習しないなんて、何を考えてるんだ」。後半20分にも鮮やかに相手を抜き去って2点目を奪った熱き助っ人は、微熱がある中でフル出場し「今日は複数得点の予感がしていた」。大宮戦3戦4発でチームを救った。

 守っては、守備陣が10試合ぶりの完封。今季3度目の結成となった闘魂DFが体を張り、DF渡辺は「降格確率100%とか言ってる人を見返したかった」と胸を張った。勝てない間は試行錯誤の連続。4日にコーチ陣、10日には選手スタッフ全員で決起集会を開き「仙台には昇格も残留も知る選手が多い。何でも言い合おう」と結束した。手倉森ヘッドコーチが提案した、闘争心を表す「赤インナーシャツ」を全員で着るなど、すがる思いで何でもやってみた。

 手倉森監督も苦しんだ。7月17日の山形戦に負けた後、サポーターから面会を要求された。同21日にクラブハウスで代表12人と相対し数時間、会談。「勝利への気持ちが見えない」と厳しかったが、監督は地元の思いを再確認。「生活をかけて戦う」と腹を割った。その後、2分け5敗でもブーイングしなかったファンに勝利を届け「久々の勝利は格別。不協和音も出なかったし、サポーターが辛抱してくれた」と感謝した。【木下淳】