リーグ16位とJ2降格圏にいるレッズの迷走が止まらない。浦和は20日、ゼリコ・ペトロビッチ監督(45)の解任と、同クラブユース堀孝史監督(44)の監督就任を発表した。ペトロビッチ監督が15日の大宮戦敗戦後に今季限りの辞任を突然表明。橋本光夫社長(62)は22日の横浜戦まで指揮を執らせると明言していたが、わずか4日後に方針転換して解任を決定。この日のミーティングで監督交代を知らされた選手たちは動揺を隠せなかった。

 ペトロビッチ監督の解任は、午前練習を急きょ午後に変更して開かれたミーティングで、橋本社長が発表した。「今季残りはそのままという感じだったのでびっくりした」と話すFW原口元気(20)をはじめ、選手たちはみな驚きの表情を見せた。同社長は前日19日夜に堀氏に就任を要請。同日中に合意を得て、この日朝、ペトロビッチ監督に解任を伝えた。

 15日の大宮戦後の辞意表明から混乱が始まった。降格圏に落ち、同監督は成績不振の責任を負って今季限りで退くと断言。クラブ幹部には寝耳に水の“非常事態”だった。現場トップとのコミュニケーション不足を露呈した橋本社長は翌16日、22日の横浜戦は同監督が指揮を執ると明言。解任の可能性には言及しなかった。29日にナビスコ杯決勝も控えている。18、19日のチーム練習も同監督が指導し、戦術の確認などを入念に行っていた。今季はこの体制のまま乗りきるつもりに思えた。

 ところが、横浜戦の2日前となったこの日、事態が急変した。チームの目標が「残留」に絞られ、意思統一が大事なタイミングで断行された前言撤回の監督交代劇。選手たちが戸惑うのも無理はなかった。

 現場を困惑させる“心変わり”について同社長は「残り5試合で置かれた立場を考え、ベターと思われる考え方に決めた」と説明。解任の直接的な理由も「熟慮した結果」と具体性に欠く説明に終始した。同監督はこの日、クラブハウスに姿を見せなかった。いったん口にした横浜戦での指揮権を取り上げるドタバタ迷走人事。サポーターの理解を得ることは難しそうだ。

 今季は優勝を目標に掲げてペトロビッチ監督を招聘(しょうへい)したが、開幕から低調。攻撃の柱となるFWエジミウソン(29)を放出したあげく、リーグ14位まで後退した9月12日には柱谷幸一GM(50)を解任。チグハグな措置に影響され、チーム状態が上向くことはなかった。

 後任の堀氏はトップチーム指揮の経験がなく、手腕は未知数。同社長は「育てた若手がチームに多い。浦和を熟知している」と評価するが、トップチーム監督の条件となるS級コーチライセンスの保持者がクラブ内で堀氏ただ1人という事情も見え隠れする。正式な契約期間も未定で、場当たり的な印象も強い。チームは混乱を引きずったまま、試練の終盤戦を迎える。【松田秀彦】