クラブ史上初の高校生DF抜てきで“昇格圏分け目”の大勝負に出る。J2札幌は今日26日、鳴門ポカリスエットスタジアムで3位徳島と対戦する。U-18DF奈良竜樹(18)が、札幌DF史上最年少となる18歳1カ月7日での先発Jリーグデビューが濃厚だ。勝てば昇格圏復帰、負ければ徳島との勝ち点差が5に広がる大事な一戦。勢いある伸び盛りを投入し、4戦ぶりの勝利を引き寄せる。

 つかみはOKだ。徳島市陸上競技場で行われた25日の直前調整。奈良がJデビュー前の“通過儀礼”を難なく越えた。ミニゲームで敗れ罰ゲーム担当になったGK李がネタに窮すると、石崎監督は急きょ奈良を代役に指名。芸もプレーの肥やし。間をおかず腕立て伏せの姿勢でアキレスけんを伸ばすと「し~ち、は~ち、きゅ~、じゅっ!」とシャウト。完璧な古辺コーチの形態模写だ。思いきりの良さと素早いネタ出しにチームメートは爆笑。3連敗に沈むムードをキレのある1発芸で盛り上げた。

 次はプレーでキレを見せる。3位徳島との直接対決。負ければ昇格圏との差が5に広がる。まさに今季を占うターニングポイントだ。「チームとしても大事な時期。生半可な気持ちで出てはダメ。集中して勝利に貢献できるように頑張りたい。ゼロで抑える」。1対1の強さを生かし、9月17日の北九州戦以来、6戦ぶり完封勝利を呼び込む。

 札幌国際情報高に在学中だが、18日からのミニ合宿には1冊の参考書も持参しなかった。息抜き用の本もゲームもDVDも持ち込まなかった。「今はサッカーの練習が第一。休みの時間はほとんど部屋で寝て、疲れを取るようにしています」。徹底したサッカー漬けでチャンスを手にした。

 高校生がプロのDFラインに入ることは並大抵のことではない。だが、そこは頼れるアニキがいる。奈良の前のボランチには主将の河合が入る。「緊張するだろうから声をかけて、奈良が楽しんでプレーできるように引っ張っていければ」。センターラインには竜二と竜樹の“ダブルドラゴン”が並ぶ。最近4戦未勝利の鬼門鳴門。札幌が荒れる渦潮から昇格した07年以来の勝ち点3をつかみとり、昇り竜となってJ1へ駆け上る。【永野高輔】

 ◆奈良竜樹(なら・たつき)1993年9月19日、北見市生まれ。北見小泉小2年時に北見ブルーサンダースでサッカーを始める。北見小泉中2年からセンターバック。09年に札幌国際情報高進学と同時に札幌U-18入り。今季からJリーグ出場可能な2種選手登録され、10月8日の天皇杯2回戦水戸戦でトップチームデビューを果たした。家族は母親と弟。180センチ、70キロ。右利き。

 ◆札幌のリーグ戦年少出場

 最年少は昨年10月24日の富山戦(富山)で途中出場したMF荒野の17歳6カ月4日。2位は今年9月24日の徳島戦(札幌厚別)でリーグ戦デビューしたMF前の18歳と8日。先発最年少記録のMF三上の18歳20日は3位。すべて石崎監督が抜てきした選手で、奈良が徳島戦に出場すれば年少4位、DF登録では今年5月21日の鳥栖戦(ベアスタ)で櫛引が記録した18歳3カ月9日を抜く最年少記録となる。