<天皇杯:C大阪1-1(PK4-2)仙台>◇4回戦◇17日◇金鳥スタ

 仙台がPK戦にもつれこんだ激闘の末、2大会ぶりのベスト8を逃した。0-0での延長前半8分、途中出場のルーキーFW武藤雄樹(23)が均衡を破る先制ゴール。しかし同後半に追いつかれた。PK戦は2-4で敗れ、激動の2011年の戦いを終えた。

 エゴイスティックにゴールを狙う姿勢が実を結んだ。スーパーサブ武藤が大仕事だ。延長前半8分、MF関口のパスに抜け出して左足を振り抜いた。ボールを持ったらとにかく前へ。守備から入る仙台のサッカーにあって、異色の存在がチームを救った。

 喜びを爆発させたルーキーだが、満足はしていないはず。心に秘めた目標がある。「試合に出ている生の姿を何とか早く親に見せたい」。普段は神奈川の実家でテレビ観戦する両親。今季はユアスタに2回、ベンチ入りメンバーに選ばれたアウェーの1試合でもスタジアムに呼んだが、結局その時は試合に出られなかった。天皇杯で勝ち上がれば、実現のチャンスは残っている。だからこそ負けるわけにはいかない。

 前半から苦しい時間が続いた中で、後半22分に投入されて流れを変えたのも武藤だった。「ここ最近、気持ちの面でも乗っている」と話す通り、交代直後のシュートでゴールへの強い意欲を示すと、26分には得意のドリブルで見せ場をつくった。左太もも裏の肉離れからの復帰戦とは思えぬハードワークを披露したMF角田も見逃せない。より強固になった自慢の堅守に武藤というスパイスが加わり、延長弾は生まれた。

 しかし延長後半9分、痛恨の同点ゴールを許した。「激しい試合になる」という戦前の手倉森監督の言葉通りの熱戦はPK戦へ。4人全員が成功させたC大阪に対し、仙台は2人目のFW赤嶺と3人目の武藤が失敗。「希望の光」を目指して走り続けた仙台の特別な1年が終わりを告げた。【亀山泰宏】