<J1:鹿島2-0柏>◇第34節◇1日◇カシマ

 教え通りの2発だった。鹿島FW大迫勇也(22)は前半41分、MFドゥトラのパスを受け前方を確認。左足で迷わず狙い、右隅に決めた。後半23分には技ありヘッド。FWジュニーニョの左クロスをニアサイドで頭にかすらせながら、流し込んだ。「監督からはとにかく『シュートを打て』と言われ続けたんで。そのおかげで吹っ切れた部分もあるし。だから打てたと思う」。

 突然の別れだった。11月29日の練習前ミーティング。突然、ジョルジーニョ監督(48)から切り出された。家庭の事情を理由に今季限りでの退任報告。今季、才能だけでなく実力を評価し起用され続けただけにショックだった。ロンドン五輪日本代表メンバーから外れた際には、同代表の関塚監督に向けて「間違った選択をした」と異例のメッセージを出し、大迫の心中をかばってくれた。終盤戦、1トップを託されたのも信頼の表れだった。

 宿題もある。試合後のピッチ上。セレモニーを終え監督と抱き合うと、耳元で「ダイヒョウ、ダイヒョウ」。試合後の会見でも同監督から「将来、日本代表のセンターFWになることは間違いない」と最大級のエールを受けた。目標の2桁ゴールも届かず9得点。「また来年に持ち越しです」と大迫は13年を見据える。

 クラブは後任監督として、関塚氏の調査と情報収集に入っている。「天皇杯を優勝して送り出したい。来年、代表に入っていい報告ができるようにできれば」。ジョルジーニョ監督への感謝の気持ちは尽きない。【栗田成芳】