<ゼロックス・スーパー杯:広島1-0柏>◇23日◇国立

 J1王者広島のFW佐藤寿人(30)が、ファンタスティックボレーで5年ぶり2度目の優勝を手にした。前半29分にDF水本裕貴(27)が頭でつないだパスを左足のジャンピングボレーで決め、1-0で天皇杯王者柏に快勝。Jリーグのシーズン幕開けを告げる最初の公式戦を制し、2連覇が懸かる3月2日のJ1開幕戦へ最高のスタートを切った。最大6冠獲得が可能な今季の広島は、27日にはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)初戦にも臨む。

 世界中、どこに出しても恥ずかしくない。佐藤が前半29分、掛け値なしの芸術弾を決めた。MF青山のクロスをDF水本が頭でつないだ瞬間、DFの後方に素早く2歩ステップして、スペースをつくった。直前まであった自分の残像を打ち抜くように左足を振る。マークを外す動き、正確なインパクト、ゴール右上へのコース。完璧な決勝点だ。

 「素晴らしいゴールだった。もうないんじゃないですかね。出来すぎです」

 試合前にはセリエAのゴール映像を見てイメージを高めた。しかし海外のゴール集と並べても、ひけをとらないゴールで、Jリーグの13年シーズンの幕を開けた。

 20年前は小5のサッカー少年。FWカズに憧れた。今でも「レジェンド」と表現する。忘れられないのは93年4月8日、W杯米国大会予選のタイ戦。MF福田の縦パスをカズが左足ボレーで決め、1-0の勝利。J発足を契機に、初のW杯を目指して突き進む中心にカズがいた。「ドライブシュートのように吸い込まれて。その後のカズダンスも含めて、学校で何度もまねをした」。そんな少年が時をへてカズと同じ左足ボレーでファンを酔わせた。

 Jリーグの主役だ。昨季は22ゴールで得点王や最優秀選手賞を獲得して、現在J1通算117得点。今季も同じ22得点を挙げれば、カズのJ1通算139点に並ぶ。「そういったところにトライしていきたい。カズさん、ゴンさん(中山雅史氏)の背中を追ってやってきた。その数字はモチベーション」。Jリーグのストライカーの系譜に、佐藤の名前がある。

 「Jリーグの良さを伝えたい。将来の子どもたちにも。国内でずっとやってきたプライドがある。このゴールシーンでJリーグもおもしろいと興味をもってもらえれば」と胸を張った。

 リーグ王者として柏を撃破。浦和に移籍した日本代表DF森脇の穴を感じさせず、1冠目を獲得。今季はJ1連覇、ナビスコ杯、天皇杯、ACL、クラブW杯と最大6冠のチャンスがある。佐藤は、プレー中に左膝を打ち大事をとって後半15分で交代したが「打撲なので大丈夫です」。アジア制覇への第1歩として、27日ブニョドコル(ウズベキスタン)戦に出陣する。【益田一弘】