<J1:大宮3-1鹿島>◇第4節◇30日◇NACK5

 状況に応じたモデルチェンジが決勝点を生みだした。試合序盤、大宮FW長谷川悠(25)は前線に蹴りこまれたロングボールの競り合いに追われた。187センチの長身を生かしたポストプレーこそ最大の持ち味。山形時代の10年シーズンは1得点に終わったものの、当時の小林監督からは“つぶれ役”に徹する姿を評価され、スタメンを守り抜いた。だがこの日はDF青木とのヘディング勝負に3連続で負けるなど、長所を生かし切れない時間が続いた。

 転機は前半終了間際。小倉ヘッドコーチから「中盤に引いたり、サイドに張る動きをしろ」の指示が出ると、ターゲットマンとしての仮面を脱ぎ捨てた。すると面白いようにフリーでボールがまわってくる。ピッチを動き回ることと、試合開始から同じ役割を繰り返し、鹿島に「長谷川=ポストプレー」のイメージを持たせたことでマークが甘くなった。

 後半8分、中盤でパスを受けると、眼前に広がるスペースへドリブル。相手2人の間に通した絶妙のスルーパスが、追い越してきたDF高橋にわたり、FWノバコビッチの決勝ゴールにつながった。

 環境の変化が新たな一面をもたらした。山形時代は得意のスタイルばかりを要求されたが、ショートカウンターを得意とする大宮ではそれだけでは生き残れない。「自分を追い越す動きをする選手が多いから、パスも出せるようにした」と出し手としてのプレーを身に付けた。得点の場面はまさに練習通りの一手。「いいタイミングでボールが出せた」。“パサー”の顔で喜んでいた。【湯浅知彦】